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JMAマーケティングコラム 第44回「引きこもるシニアを外に連れ出す」

2015/10/15

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦

■ 「敬老の日」に合わせてシニアのデータを更新。〜80歳以上が1000万人を超える。

毎年恒例の総務省の高齢者の人口推計(更新)が「敬老の日」に合わせ21日に公表された。
それによると今年の9月15日時点での65歳以上の高齢者の人口推計が3384万人で、前年と比べると、89万増加。総人口に占める割合(総人口比)は26.7%と両数値とも過去最高を更新した。
高齢者を男女別にみると、男性は1462万人、女性は1921万人と女性が男性に比べ、459万人多く、女性高齢者は女性人口の29.5%を占めた。

80歳以上は、1002万人(総人口比7.9%)で、前年と比べ38万人増となり、初めて1千万人を超えた。男女別にみると、男性の351万人に対し、女性はその倍近い650万人で、10人に1人が80歳以上になる。
(総務省:統計トピックスNo90「統計から見た我が国の高齢者」より抜粋)

高齢者の人口が総人口の1/4を超えたのは昨年の平成26年度で、この割合は今後も上昇を続け、第二次ベビーブームに該当する時期に生まれた昭和46年から49年生まれが高齢者になる平成52年(2040年)には、高齢者の層人口比率が36.1%になると見込まれている。

高齢者人口及び割合の推移.gif

資料:国立社会保障・人口問題研究所「人口推計」


また日本の高齢者率は、世界でも各段に高く、主要8か国の高齢者の割合では、日本が唯一25%を超え、2位のイタリアの22.4%、3位のドイツの22.2%を大きく引き離している。
ただ、25年後の平成52年には、イタリア、ドイツ、フランスも高齢者率が25%を超える高齢者国家になると予測されている。


■交流が少ない高齢者〜引きこもる日本の(一人暮らし)老人

一方高齢者人口の拡大に伴い、一人暮らしの高齢者が増加し、大都市近郊の団地などでは周囲と連絡を絶ち孤立死が増えるなど、高齢者の引き込もりが社会問題になっている。

内閣府の「高齢者の生活実態に関する調査」(平成24年度版)からの報告では、60歳以上の高齢者の会話の頻度(電話やEメールを含む)をみると、全体では「毎日会話をしている」者が9割を超えるものの、一人暮らし世帯については「2〜3日に1回」以下の者も多く、男性の単身世帯で28.8%、女性の単身世帯では22.0%を占める。


また、近所づきあいの程度は、全体では「親しくつきあっている」が51.0%で最も多く、「あいさつをする程度」は43.9%、「つきあいがほとんどない」は5.1%となっている。

性・世帯構成別に見ると、一人暮らしの男性は「つきあいがほとんどない」が17.4%と高く、逆に一人暮らしの女性は「親しくつきあっている」が60.9%と最も高くなっている。

病気のときや、一人ではできない日常生活に必要な作業(電球の交換や庭の手入れなど)の手伝いについて、「頼れる人がいない」者の割合は、全体では2.4%であるが、一人暮らしの男性では20.0%にのぼる。
いずれにしても、一人暮らしの高齢者の社会(周囲)とのつながりの薄さや引きこもりが多いことがわかる。 



■バルに集うスペインのシニア達〜孤独な老人が少ない

翻って海外の高齢者はどうなのだろう。
筆者は、シルバーウィークを利用して、スペイン北部の「美食の都」バスク地方を旅行した。

バスク地方といえば、スペイン風居酒屋「バル」の発祥の地として有名であり、この街場の立ち飲み居酒屋で、バスク人たちは毎晩のようにはしご酒をしている。そんな「バル」の中でひときわ目につくのが、地元のお年寄りのご夫婦や、一人カウンターでワイン片手に店の人や知り合いと語り合う中高年男性の姿である。

《バルに集うバスクのシニア層:午後9時頃撮影》
 バルに集うバスクのシニア層.jpg

実はスペインの「バル」は、夜店が開く8時半(晩ご飯が遅い)から9時半ころは中高年層が多く、深夜になるにつれ徐々に若者層にシフトしていく。時間帯別に利用層がうまく棲み分けしているようだ。

バスク(スペインの他でも同様)では、バルだけでなく、街を歩く、また外で過ごす老人の姿がとても多い。

バスクの都市は観光地であるためか街角にやたらベンチが多く、そこには身だしなみをきちんとした老紳士が、新聞をゆったりひろげ寛いでいる。

ひとりで買い物カートを引いて市場に買い物に行く元気なおばあさん、また、ずいぶんと年を召して体が思うように動かないお年寄りでも、誰かの介添えでゆっくり散歩し、疲れたら通りのあちこちに設置してあるベンチに座って休み、また目的地に向かって歩き始める。バスクの老人は、家の中にこもらずにできるだけ外で過ごすようにしているようだ。


高齢者の外出を促進する上で、外出の「手段」とともに「目的」となる場を提供することが重要である。
出かけたい場所や出かける目的が少ないと外出頻度が低くなる。スペインでは「バル」に集い、少量で美味しい「ピンチョス」をつまみながら語らうことが外出の大きな目的・楽しみとなり、途中で休めるベンチや家族、知人の介添えが(外出支援の)手段としてうまく機能している。

《バスクのバルの少量でいろいろ楽しめる「ピンチョス」》
 バスクのバルの少量でいろいろ楽しめる「ピンチョス」.jpg

スペインに劣らず食に貪欲な日本人、そして量より質の食へのニーズの強い日本の高齢者。(弊社調査より)
バスク地方の少量で美味しい物を提供する「バル」、そして高齢者に優しい街づくりや周囲のサポートは、高齢社会の日本の手本になると考えている。