ギャルの条件とは?
シブヤ「ギャルって何才までがギャルなんだろう?」
シブヤはギャル雑誌を眺めながらポツリとつぶやいた。現在、ジャパンドリンク社大崎の依頼でギャルに関する調査を企画し、調査対象となるギャルの対象条件に関して検討を行っていた。
シブヤ「ギャルママというのも話題になっているけど、未婚のギャルって年齢の上限がありそうだよな……。例えば、この舟山久美子さんって、19才か……。」
梅田「シブヤ君って、そういう路線が好きなんだ!意外ぃー。」
梅田はシブヤの先輩であり、頼りになる姉御肌のリサーチャーである。定性調査のモデレーターをしており、人をいじるスキルも天下一品のため、シブヤをよくオモチャにしているようだ。
シブヤ「梅田さん、いや、これはですね、仕事ッす、仕事!ホント、信じて。」
梅田「本当?むちゃくちゃ怪しいけど……。ここだけの秘密にしとくから言っちゃいなさい。」
シブヤ「だから−、違いますよ!」
梅田にしばらくいじられた後、本題に入った。
シブヤ「調査結果を見ると下限の平均が14.9才、上限が23.6才で、なんとなく納得感はあります。でも、上限では22才と25才に分布の山が来ているので、本当に平均値でいいのかって悩ましいんです。」
8才 | 0.4 |
---|---|
9才 | 0.0 |
10才 | 1.1 |
11才 | 0.0 |
12才 | 6.4 |
13才 | 12.1 |
14才 | 11.4 |
15才 | 30.6 |
16才 | 26.0 |
17才 | 6.8 |
18才 | 4.3 |
19才 | 0.4 |
20才 | 0.7 |
平均/才 | 14.9 |
16才 | 0.7 |
---|---|
17才 | 0.0 |
18才 | 8.9 |
19才 | 2.8 |
20才 | 10.7 |
21才 | 3.2 |
22才 | 15.3 |
23才 | 9.3 |
24才 | 7.5 |
25才 | 18.9 |
26才 | 5.3 |
27才 | 1.8 |
28才 | 5.7 |
29才 | 4.3 |
30才 | 3.9 |
31才以上 | 1.8 |
平均/才 | 23.6 |
梅田「それはちょっと気になるね。でももっと根本的な問題だけど、15才と24才位のギャルを一緒のグループにするの?」
今回はグループインタビューによる調査を企画している。グループインタビューでは数名の対象者が同席するため、1つのグループ内であまり年齢や、なにかの性質の違いが大きすぎると、本音の発言がしにくくなったり、グループとしての相互作用が起こりにくくなることがある。
シブヤ「確かに!僕が高校生の頃も、大学生や社会人ってすごく大人に見えて、何を話していいのか分からなかったかもしれません。」
梅田「そうそう、それに高校生と高校卒業後って何かと違いがあるのよね。お金とか行動範囲とか、服装とか、読んでるファッション誌も違っていたりするし。」
シブヤ「そうか、高校生と、高校卒業後でグループを分ける!その上で年齢を検討ですね。」
梅田「まあ、そんなとこかしらね。」
その後、シブヤはWebでの定量調査の結果や、ギャル系雑誌も参考にして、"ギャル"についての条件を詰め、調査企画書を作成していった。
- 調査企画書
- 【対象条件】
- 女性15-24才(グループの設計は高校生グループと、卒業後グループ)
- 以下の該当数が多い者を優先してリクルート
-
- アイメイクが全体的に濃い
- アイラインが黒く、太い
- つけまつげをしている
- カラーリングをしている
- ネイルをしている
- 渋谷に行くのが好きである
- ギャル雑誌を必読している(雑誌指定)
- ギャル系ブランドをよく買っている(ブランド指定)
シブヤ「いけね、もうこんな時間だ。集中していると早いな。」
仕事を終えると、シブヤはセンター街の喧噪を抜けて駅へ向かった。
いつの間にかギャルについて少しは知識がついてきたようで、いつものセンター街も少し違った視点で見るようになっていた。
シブヤ「あ、あんな感じの子がギャルだな。最近はカンカン帽かぶってる子も見かけるよな・・・。」
携帯電話を使った調査
そして、数日後、依頼元であるジャパンドリンク社にて……。
シブヤ「大崎さん、今日は例のギャル調査の企画書をお持ちしました。」
大崎「シブヤさん、お待ちしていました。早速聞かせてください。」
シブヤは、目の前にいるジャパンドリンク社大崎の依頼でギャルに関する調査を企画し、今日はその企画内容についての打ち合わせのため、大崎のところに訪問していた。
シブヤ「今回の調査は、御社でターゲットと考えられている「ギャル」の人となり、ファッション、価値観などを把握し、どんなものを好むのかといったテイストを掴むため、当初ご相談頂いたとおりグループインタビューで調査を実施したいと考えています。」
大崎は、安心したような表情をした。
シブヤ「しかし、それだけでは、十分にギャルを把握しきれない恐れがありますので、今回は少し仕掛けをしたいと考えています。」
大崎の目が輝いた。
シブヤ「携帯電話のカメラ機能を使った事前調査を行って、どんなものが好きなのか、どんな日常を送っているのかを把握してからグループインタビューを行う、2ステップの調査にしたいと考えています。」
大崎「携帯電話を使った調査ですか……。なるほど、確かにこの層には向いていそうですね。頻繁に携帯を使っていそうですし。」
シブヤ「ハイ、僕もそう思いまして。まだ出来たてのツールなんですが、今回はこれを使ってみたいと思います。」
シブヤは麻布に目配せをした。
麻布「では、携帯電話を使った調査ツール"インサイトダイアリー"について簡単にご説明させてください。」
麻布は、資料を説明し始めた。
麻布「通常の日記調査は、紙の調査票か、インターネット上の調査票に日々の記録をつけていきます。しかし、出先で見つけたお気に入りのものや、買った飲料などについて、製品名、買った場所、時間、シチュエーションなどを全てを正確に覚えて、自宅に帰ってきちんと日記につけるのは、そう簡単なことではありません。」
シブヤ「きっと僕であっても厳しいですし、飲み終わったら容器を捨ててしまう飲料ならなおさらです。」
麻布「そこで、多くの人が保有し、普段持ち歩いている携帯電話を使って、忘れないうちにその場で写真に撮り、コメントをつけて記録していくのがこのツールになります。」
大崎「なるほど、ギャルだから携帯というだけの話でもないんですね。」
シブヤ「そうなんです。」
駒場「こういった対象者が普段接しているもの、お気に入りのものを写真で送ってもらった上でグループインタビューに参加してもらうと、対象者の発言だけでは分からない部分まで見えてきますので、ターゲット層の好むテイストの把握には非常に向いていますよ。」
いつもよりたくましく見える部下二人、シブヤと麻布を見守っていた駒場も一言いいたくなったようだ。
梅田「モデレーターとしても、対象者の人となりのイメージができるので、何を聞こうか事前に考えられたり、少しでも背景が見えることで聞くべきポイントが見えやすくなるのがメリットですね。」
今回は梅田がモデレーターで参加することとなり、打ち合わせに同席していた。
そして、打ち合わせの席で新たに出た意見も取り入れ、携帯電話ツールを日記調査に用いたグループインタビューの調査企画書にGoサインが出た。
送られてきた写真
シブヤ「今日から携帯日記調査をスタートしてください。……よろしくお願い致します。っと、エンター!」
シブヤは携帯電話ツール"インサイトダイアリー"開始の連絡を対象者にメールで送り、日記調査がスタートした。
梅田「なんだか機嫌が良さそうねー、またギャル雑誌でも読んでるの?」
シブヤ「雑誌っていうか、例の携帯電話ツールで調査を開始したところなんです。どんなのが送られてくるんでしょうね。」
梅田「そうだったね、確かにどんな写真が送られてくるんだか……楽しみね。」
シブヤ「梅田さんも分からないもんなんですか?」
梅田「当たり前でしょ、私も周りにギャルっていないし、女性でもファッションや好みのテイストって結構違うのよ。」
そして翌日、対象者から写真とコメントが届いていた。
シブヤ「来た来た!本当にキラキラだな−。」
- 池袋PARCOのアクセサリー屋さんで買ったシュシュ
- ピンクの色とスワロフスキーが付いててキラキラしてるところが特にお気に入りで、友達からもよく褒めてもらえる。バイトの時にいつもこれを付けてテンションあげている。
- スティーブマッデンというブランドの夏サンダルを発見!
- すごくキラキラしてるのに、色が落ち着いてるので派手すぎないところが良い。
夏はシンプルなワンピースなどに合わせて履きたい。
シブヤ「こういうの付けるとテンションがあがるのか……。」
麻布「シブヤさん、私にも見せてください!」
駒場「シブヤ、よく見えないぞ。」
気がつけば、麻布と駒場がシブヤのパソコンをのぞき込んでいた。
- ずっと愛用してる、お揃いの筆箱と化粧ポーチです
- 前に家の近くのお店で見つけて、一目惚れして買ってしまぃました!
いちご柄大好きなのでかなりのお気に入りです♪
化粧ポーチの方の色が、筆箱よりピンクっぽくなってて、そこがまたかわいぃんです。
シブヤ「こっちはイチゴ柄のポーチだ!」
麻布「こっちはカゴバックですね、私も夏場はカゴバッグです。分かる分かる。」
- 1年前、池袋で買ったBEAMSのカゴバッグ
- これからの季節、マキシ丈ワンピとかに合わせたらかわいいと思う!軽いし使いやすい!
シブヤ「マキシ丈って何だろ?」
麻布「足がほとんど隠れるような、下まである長いワンピースのことですよ。」
シブヤ「maximumだからマキシなのか……。」
駒場/シブヤ「短い方がいいな……。」
麻布「そこ二人、ハモらないでください!」
携帯で送られた写真とコメントを見ていると、まだ顔も分からないにも関わらず、対象者の生活の一部を共有しているような、不思議な親近感を感じ始めるシブヤ達だった。
シブヤ「こうやってどんなアイテムを持っているのか、どこが好きなのかとか、そういう事が伝わりやすいんですね。さすが携帯電話を使ったツールだ。」
駒場「ちょっと宣伝入っているな、そのセリフ。」
シブヤ「そこ、突っ込まないでください!」
麻布「でも、こうやって写真とコメントを見ていると、どんな人なのか少しだけ分かるような気がしますね。」
シブヤ「ホント、楽しみになってきたね。」
グループインタビューに向けて、段々と「ギャル」に近づいてきたように感じるシブヤだった。
次回、シブヤ龍太郎のリサーチファイルは、グループインタビューで対象者に接近します。
次号をご期待ください。