浮遊層の店頭購買
シブヤ「こんばんは、荻窪さん、今日はどうかよろしくお願いします。」
梅 田「よろしくお願いしまーす。」
荻 窪「こんばんは、荻窪です。よろしくお願いします。」
シブヤと、先輩の梅田は、今日は非計画購買を探る「ショッパーインサイト調査」のため、夕方にオフィスを出て対象者である荻窪と待ち合わせた。
荻窪は今回、ショッパーインサイト調査の対象者として選ばれた30代前半の女性で、都内に住む会社員である。日常の購買行動を探るため、今日は【会社帰りにスーパーに立ち寄ってチューハイを買う】というタスクで調査を行うこととなった。
シブヤ「いつもこの店で買い物をして帰るんですか?」
荻 窪「そーですね、会社帰りに週に2、3回はこの店を利用していますね。」
梅 田「そういえば、もう一つ手前にコンビニがありましたね?あちらには立ち寄られないんですか?」
荻 窪「あっちの店には、残業でもっと遅くなってスーパーが閉まったときに行く感じです。やっぱりスーパーの方が野菜とか安いんですよ。」
梅 田「それ分かります!」
シブヤ「チューハイもここで一緒に買うんですか?」
荻 窪「はい、そうです。何を買うかはその日によって違うんですけどね。」
今回の対象者は、チューハイの銘柄浮遊層(その時々で購入するブランドが変わる者)が選ばれており、店頭でどのように製品に接し、何を見て、どのように購入銘柄が決定されるのかを探るのがテーマである。
店頭へ
シブヤ「では、そろそろ準備しますので、ちょっと待っていて下さい。」
シブヤは例の「ビデオ内蔵グラス」を取り出し、準備を行った。
荻 窪「メガネをかけてと…えー、もうこれで撮れているんですか?」
シブヤ「大丈夫ですよ。」
梅 田「では、普段通りの買い物をお願いしますね!」
荻 窪「はい、分かりました。」
そして荻窪は店内に入った。
荻 窪「あっ、ネギが安くなってる!えーと、それに納豆も買わなきゃ。…さて、お酒お酒、なんか珍しいのがあるな、何だろ?…。」
…その後、荻窪はしばらく買い物を行った。
荻 窪「お待たせしました!」
梅 田「どうでした?」
荻 窪「いつも通り買い物してきました。」
梅 田「じゃあ、早速近くの喫茶店にいきましょうか?」
シブヤたちは近場の喫茶店に移動し、購買時の状況についてヒアリングを行った。
動画を見ながらのヒアリング
シブヤ「じゃあ、さっき撮った動画を再生しますね。」
荻 窪「よく映ってますね−。そうそう、ネギを見て、納豆を買って・・・。」
シブヤ「チューハイ売り場にきました。」
梅 田「商品を色々眺めているんですね。」
荻 窪「そうですね・・・何か新製品でもないかな〜と思って。まずはじろじろ見ちゃうんですよね。」
シブヤ「気に入った商品は触ってみるんですか?」
荻 窪「新商品とか、パッケージがおいしそうだとちょっと見てみようかなって」
梅 田「でも、触っているのは、なんだか青とか、白とか、黄色っぽいパッケージが多くないですか?」
荻 窪「甘くない、レモンとかグレープフルーツ系が好きなので、そういうのが気になっちゃいますね。」
シブヤ「これは何を見ているんですか?」
荻 窪「ZEROとか書いてあるじゃないですか、何がZEROなのかって、カロリー??それにアルコール度数はどうか気になって。」
梅 田「アルコール度数って気になるんですか?」
荻 窪「はい、気になりますねー。度数が高い方がいいじゃないですか。」
シブヤ「な、なるほど。」
梅 田「あれ、一回手に取った商品を戻して、左隣のを取り直してますね。これは?」
↓目がとまり
↓350mlに手を伸ばし
↓一旦手が戻る
↓500mlに手を伸ばす
荻 窪「それは350ml二本にしようかと思ったんですが、さっきアルコール度数が高かったから500ml一本でも良いかなって思って。」
シブヤ「そうなんですね。」
梅 田「はい、これで一通り見てみましたが・・・そういえば、価格は確認されましたか?」
シブヤ「…(あれ、本当だ価格の話が出なかった!)」
荻 窪「価格は大体同じなので見ないですね・・・。同じ店で買うし、あんまり変わらないような気がします。」
シブヤ「そうか・・・。」
梅 田「じゃあ、最後に整理させて下さい。」
荻 窪「はい。」
梅 田「(1)最初に新製品がないか眺めて、(2)甘くない感じのする色のパッケージを色々手にとってみて、(3)アルコール度数などを確認して、買う・・・そんな流れで考えて良さそうですか?」
荻 窪「言われてみればそうですね。今まで自分では特に考えていなかったんですが、ビデオを見ていたらそうでしたね。」
シブヤ「…(そうか、自分でも気づかずそういう購入をしていたのか!!)」
そして、購入直後に喫茶店で実施したインタビューは終了した。
シブヤ「本日はどうもありがとうございました。」
梅 田「チューハイ、ぬるくなっちゃってすいません。もう一度冷やして飲んで下さいね。」
荻 窪「どういたしまして!」
帰り道、シブヤは駅に向かいながら梅田に声をかけた。
シブヤ「へぇー、購入直後にビデオを見てもらいながら聞くのって、ライブ感が残っていていいですね。」
梅 田「そうね、買ってすぐだから記憶も新鮮だし、動画を見ていると何気なくしている行動まで残っていて、その辺がありありと見えるからね。」
シブヤ「ちゃんと確認している部分と、結構いい加減にしか見ていないところもありましたよね。価格なんて見ていないし。」
梅 田「そうそう、あれは面白かったわね!」
シブヤ「アイトラッキングを使わなくても、動画とヒアリングでどこを見ているかとか、その辺が大体は拾えるものなんですね。」
梅 田「一緒に現場を見ていて、動画もあるし、記憶が新鮮なうちにヒアリングできるからってとこかしらね。」
シブヤ「なるほど・・・。」
手応えを感じつつ帰路につくシブヤだった。
そして、話は2ヶ月後に戻る…。
ジャパンドリンク社の大崎からのショッパーインサイト調査の問い合わせがあり、早速企画書作成に取り組むシブヤだった。
シブヤ「駒場さん、まだラフですけど企画書できました!これ見て下さい。」
駒 場「ヨシ!待ってたぞ。」
上司の駒場はどこか嬉しそうだ。
シブヤ龍太郎のリサーチファイル、「ショッパーインサイト編」は今回で終了となります。
次回は年明けに別テーマでお送りする予定です。
少々気は早いですが、来年もシブヤ龍太郎のリサーチファイルをどうかご贔屓によろしくお願い致します。