〜これは架空のリサーチャー:シブヤ龍太郎を主人公とした仮想の物語〜
アイトラッキング調査
シブヤ「WEBサイトのリニューアルをされるんですか?」
シブヤ龍太郎はネットベンチャージャパン社の乃木坂から、電話で相談を受けていた。
乃木坂「シブヤさん、そうなんです。例の新サービスは順調に進んでいるんですが、そろそろうちの稼ぎ頭【なびなびタウン】のサイトリニューアルを考えていまして、今回はしっかり調査をしたいと考えています。」
シブヤ「前の調査の時、話されていたユーザビリティ周りの話でしょうか?」
乃木坂「そうです、今回はそういった事をしっかり洗い出しておきたいものですので。それと、前に話されていたアイトラッキングもお願いしたいと思いまして。」
シブヤ「ありがとうございます!」
シブヤは概要を一通り聞いた後、打ち合わせのアポを取り、電話を終えた。
どんなアウトプットなのか?
麻 布「アイトラッキング調査のお話なんですか?」
シブヤ「そう、そうなんだよ。」
麻 布「えーと、よく見たところが赤くなったりするあれでしたっけ?」
シブヤ「そうそう、そんな感じのだよ。たぶんそれは色々あるアウトプットの一つ、ヒートマップていうやつだね。」
麻 布「ヒートマップっていうんですか?熱い地図?」
その時、近くを通りかかった上司の駒場が会話に加わった。
駒 場「ヒートマップ…あれは視線が長く留まった部分を温度が高いように表示したもので、言うなればプレデターの視界みたいなヤツだな。」
シブヤ「今度はそっちのネタですか!森の中でも人が見えちゃうあれですよね。」
駒 場「そうそう!泥を塗れば見えなくなるはずだ…って1作目ネタはそろそろ辛いな…。」
麻 布「ちょっと今回は無理でした。」
シブヤ「話を戻して…。えーと、シェルフテストでやったデータがあったと思うんだけど・・・。あった、あった。」
麻 布「あっ、これです!こんなイメージでした。」
シブヤ「これはゴーグル型のアイトラッキング装置を使った例だね。」
駒 場「そうそう、こんな感じで視線が留まった時間によって色が変わる仕組みだ。真ん中の製品に視線が集中しているな。」
シブヤ「下から二段目とか、一番上の段の左も少し赤くなっていますね。」
麻 布「それに文字の部分だったり、ブランドのマークの部分も色が変わっていますね。」
駒 場「おっ、良いところに気がついたな!そういう注視点が分かるのがこの調査の売りの一つだ。」
シブヤ「他には視線の動きも分かったりしますよね。」
駒 場「そう、何を最初に見たか、そしてその後どういう軌跡をたどったか、なんてのも分かるぞ。」
麻 布「面白いですね♪」
なぜ、アイトラッキングを用いるのか?
シブヤ「うんうん、ちょっとすごいよな。」
駒 場「ところで、なぜアイトラッキングが使われると思う?」
麻 布「見ていたものが具体的に分かるから…ですか?」
駒 場「確かにそうなんだが、大まかには今までの調査でも聞けないことはない。今までもシェルフテスト(商品棚を使った調査)や、商品パッケージ調査は普通に実施しているしな。」
シブヤ「そうですよね…でも、つい見てしまったとか、意外と長時間見てしまった、目が離せない、目が追ってしまうとか…そういうのが分かるからですかね?」
駒 場「シブヤ…なんだか妙に実感がこもっているがその通りだ。意図せずつい見てしまっているものや、実際には後で聞いても覚えていないような視線の動きがあり、その辺りをリアルに、秒数といった数字で把握できる点が大きい。」
シブヤ「はは…。」
麻 布「シブヤさん、目が泳いでますよ。」
駒 場「それと、他の調査でもそうだが、アイトラッキング調査では特にどういったアウトプットを得たいか、明確にしてから実施した方が良い。」
シブヤ、麻 布「(うんうん)」
駒 場「視線の動きを一人づつ把握したいのか?、何名分もデータを重ねてヒートマップなどを見たいのか?そういった事を最初にきちんと考えておいた方が良い。定性的に扱うのか、定量的に扱うかすら変わってきてしまうからな…。」
WEBサイトリニューアルとアイトラッキング
シブヤ「えーと、それで今回はネットベンチャージャパンのサイトリニューアルの話なんですが・・・。」
駒 場「おっ、そういう経緯だったのか。」
シブヤ「そうなんです、【なびなびタウン】の使い勝手が他社より悪いと言う話があり、現状を把握して、それを反映したリニューアルをするようです。」
麻 布「【なびなびタウン】なら、私も使っています。悪くはないんですが、そんなに良くもないかもしれません。」
駒 場「そうか・・・具体的にはどの辺に課題がありそうなのか…。」
シブヤ「店を選ぶときに、色々な選び方があるんですけど、下のメニューでは少し分かりにくいのか、思ったほど利用されていないらしいです。競合の【なびーポン】は検索メニューがもっと分かりやすいかもしれないとか・・・。他にも気にかかる点があるそうです。」
駒 場「なるほど。」
麻 布「言われてみればそうかもしれません。」
駒 場「WEBサイトの場合、アイトラッキングで漠然と見ている点を調べるのではなく、何をするためにサイトを使っているときか?という【タスク】を設定して調査したほうが良い。」
麻 布「例えば…今度女子会を開くので、5人くらいで入れる表参道のお店を探していますとか・・・そういったものですか?」
駒 場「女子会か…ガールズトークって何を話しているのか気になるな…。おっと、そう、そういったノリで、実際の使用シーンを再現してもらうワケだ。」
シブヤ「僕も気になります。…じゃなくて、そういう利用シーンにアイトラッキングを使って具体的な注視点や視線の動きを押さえて、何で迷ったとか確認するわけですね。」
駒 場「そうだ。」
シブヤ「楽しみですね!」
シブヤ龍太郎のリサーチファイル「アイトラッキング編」は、次号で実際のサイト評価を予定しています。
次号も【シブヤ龍太郎のリサーチファイル】を、どうかよろしくお願い致します。