株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
DGI 室 ディレクター インタビュアー梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
DGI 室 ディレクター インタビュアー梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
エジプトでは、反政府デモの末、ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領が退陣した。
政権崩壊後も混乱は続いており、抗議デモが中東の周辺諸国へも飛び火している。
アラブ諸国で勃発している政変や暴動は、チュニジアのベンアリ政権崩壊に端を発し、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の【Facebook】や【Twitter】が状態をあおり、反政府デモが一気に広がった、と報じられている。
"新興国"では、ソーシャルメディアの影響力の大きさと伝播の速さが暴動のきっかけとなった。
新しい情報伝達手段を用いて多くの学生や国民が治安警察の動きなどの情報を共有。情報通信革命を追い風に独裁政権を倒し、民主化への道を拓こうとしている。
これだけの影響力があるSNS【Facebook】創設の動機は何であったのか、が気になった。
米SNS【Facebook】の生みの親≪マーク・ザッカーバーグ≫を取り上げた映画 『ソーシャル・ネットワーク』は、日本でも話題作となっている。この作品では、プログラマやハッカーとして天才的な能力を持つマークが、非凡な情熱を傾けて【Facebook】を作っていく過程が描かれている。
――大学生のマークが恋人(エリカ)と喧嘩して別れた事にショックを受け、彼女の悪口をインターネットに暴露し、女子大生の品定めサイトを作るところから始まる。ヒューマン映画なので、多少の脚色もあると思うが、マークはフラれた腹いせで最初の【フェイスマッシュ】を立ち上げたのだ。
驚くべきことに、市場が"成熟期"に達している米国で誕生した世界最大のSNS【Facebook】のきっかけ(=原動力)は、失恋であった。
恋人にフラれて屈折し、底知れないパワーを発揮。登録者数が世界で5億人を超す【Facebook】は、女性への情念や執着、モテたい意識がもたらした産物だった、といえよう。
現象の背景やきっかけを把握することで、人の行動喚起や感情の変化が見えることがある。
この2つのきっかけ ―― "新興国のきっかけ"と"成熟国のきっかけ"は、マーケティング経営論の≪Blue Ocean Strategy(ブルーオーシャン戦略)≫※と重なる。
"成熟国"におけるネット情報社会は、競争が激化してコモディティ化が進んでいた。
そんな中、【Facebook】は一人の若者のモテ意識や屈折からくるパワーによって、未開拓市場領域を創造してRed Ocean※から抜け出し、Blue Ocean※という新しい価値を見出すことができたのである。
そして、革新的なSNSの急速な普及によって、市場環境が未整備な状態にある"新興国"に革命を呼び起こさせるまでに至った。
と、解釈できるのではないか。
エジプトでのデモ隊と警官隊との衝突による死者は少なくとも365人、負傷者は5,500人にのぼり、デモの混乱の余波は、文化遺産にも及んだ。一部、【Facebook】や【Twitter】が遮断され、学校や公共機関などの社会機能もまだ閉鎖されているようである。
現況が悪化しないことを願い、世の中の大きな流れと変化を震え感じながら、事態を見守りたい。
※Blue Ocean Strategy(ブルーオーシャン戦略):
W・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱された理論。
競合と血みどろで戦っている既存の市場=Red Ocean(レッドオーシャン)での競争から抜け出し、まだ生まれていない競争のない市場Blue Ocean(ブルーオーシャン)で戦うための戦略。Blue Oceanは、市場を再定義し、既存の産業を拡張することによって生み出せると言われている。