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JMAアプローチプログラム 第3回〜調査の実効と戦略的活用〜

2011/02/18

タグ:澁野一彦 パッケージ調査

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

パッケージ調査の進化と分類


近年、食品や日用品など消費財の品質レベルの均一化が進行し、競合商品との差別化要素としてのパッケージデザインの重要性が高まっている。

一方でTVCF等のマス媒体の広告効果が弱くなった結果として、店頭が新商品との初めての接触機会であるケースが増えてきており、商品パッケージは瞬時の効果的インパクトを要求されるとともに、自身が訴求すべき商品情報⇒コンセプトを伝える最も有力なコミュニケーション媒体となっている。

また消費者の買い物行動→商品検討→意思決定は、他の多くの商品が並陳された店内という空間的制約条件の中で、かつ日常の購買プロセスに従って無意識下で行われる。

このような状況を受けて、パッケージ調査は実際の店頭でのシェルフを再現し、購買行動をトレースした消費者の認知・購買行動に従って設計されることが望まれるようになってきた。
以下は進化した、(新商品開発の段階別に並べた)パッケージ調査の主な分類である。

【パッケージ調査の分類】

パッケージ調査の分類.gif

@、A、Bの調査に関しては、主に定性調査や観察調査で実施されていることが多い。これらの調査の首題は「パッケージデザイン評価」であり、消費者の判断の動機や心理を探ることにより、パッケージの問題点が把握でき、何よりデザインを改善・発展させる早い段階での方向付けには適しているためである。

一方C、Dのパッケージ調査になると、マーケターあるいは商品開発担当者が下した決定を確認するとともに、「パッケージの訴求力」が売り上げへどの程度影響するかという視点に対する数的根拠が要求される。
そのため、CDのフェイズでは定量調査で検証する形になる。


新商品受容性把握(予測)調査としての「模擬店舗型テスト」


定量調査で実施されるパッケージ調査は、前述のように店頭を再現した模擬棚を作り、消費者の認知・購買行動にしたがって実施されることが一般的である。

特にDのフェイズで実施される調査(=実際はパッケージだけでなくプロダクトパフォーマンスまで測定するC/Pテストが普通)は、上市前の最終チェックの受容性把握調査として実施されるため、新商品導入後に売上がどの程度になるか?という予測を求められることになる。

このような売上予測をより精度をあげるために考えられた調査手法が"ショッパーラボ"といわれる「模擬店舗型テスト」である。テスト会場内に実際の店舗を模した疑似店舗を作り、そこに(想定する)店舗と同じように商品を陳列する。

会場テストでは製品を販売するわけにはいかないので、対象者に一定の金額のお金を渡して、いつも買い物をするように欲しいものを買い求めてもらうように依頼する。(タスク設定)

このように なるべく実際の店頭でのショッピング体験に近い状況を作り出し、購入シュミレーションをさせるものである。単なるシェルフだけでなく店の売り場全体が再現される為、より普段の購買状況に近い形で調査ができる。
またアイトラッキングなどの行動観察を併用することによって、購買プロセスの動線や意思決定時の迷いや検討の把握も可能になるなどのメリットがあげられる。


得られたデータ結果の扱い、活用→行動基準の標準化


ただ一方で、当該調査で得られたデータ結果をそのまま売上推定に使うには無理がある。
この手法では、新商品を対象者の目の前に呈示して買うかどうか決めてもらう訳であるから、配荷率100%、認知率100%という状況に相当する。

また消費者の買い物行動が、調査という半ば強制された状況で行われる(→例えば恣意的に購入場面を想定させる)という不自然さも考慮にいれなければならない。
このためにデータを調整していくわけであるが、広告露出、当該カテゴリー商品の販売率、競合品の販促による売上変動などのマーケティング要因を含む売上推定モデルをどのように構築するかが重要になる。

現在STM(シュミレーテッド・テスト・マーケティング)と呼ばれる 独自の需要予測モデルを用いた調査サービスを提供する会社も存在するが、予測できないマーケティング変数も多く、実際に導入前の予測と導入後の販売実績との一致はなかなか難しいようである。

恐らくここで重要なのは、魔法のようなすごい数式ではなく、当該調査の評価指標や調査設計のレベルを統一・標準化し、この調査を行うことによってマーケターや開発担当者が現実的なマーケティングプランを設定しその目標が達成されるよう、適切な行動基準を確立することにあるのではないかと考える。

いずれにしろ調査の実効も含めて このような受容性(需要)把握調査の目的と活用範囲、また今後の進化のベクトルに関しては クライアント、サプライヤーお互いで議論・共有されるべき問題であろう。