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JMAマーケティングコラム 第3回「Hypothesis(仮説構築)は柔軟に」

2011/07/06

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦

変容するニーズ 〜市場の争点は?

消費市場が成熟化し、あらゆる商品がコモディティ化する中で、生活者の望む方向(ニーズ)が見えにくい時代になってきている。加えて「3.11」以降、多くの常識や価値観が多様化しているため尚更である。

一方でブログやSNSなどのソーシャルメディアの急速な普及(深化)は、マーケティング情報の収集を簡易化させたものの、生活者の無自覚な発信情報が拡散することによって、逆に市場の本質や課題(争点)の見極めを難しいものにしている。

マーケティング・リサーチにおいても、WEB(調査)やブログの有用性や貢献は否定しないが、安価性や効率化が過度に強調され、市場の課題をきちんと特定化することなく安易に調査を行うことによって、開発の方向を見誤るケースも見受けられる。

このような時代だからこそ、我々は初心に戻って商品開発の初期段階で、市場及び自社の経営環境を把握した上で、該当市場のマーケティング課題を正しく特定化し、より的確な仮説を構築するためのリサ−チプロセスを築かなければならない。



マーケティング課題の特定化

マーケティング課題とは、現状(市場)を見据え、次のステップに進むために抱える問題点であり、調査で解明すべきテーマである。マーケティング・リサーチも当然このマーケティング課題に対応して設計される。これが不明瞭なままだと、導き出される結果もピントがずれてあいまいなものになる。

マーケティング課題はマーケター(発注者側)の視点であるが、リサーチャ−も調査の責任主体として共有しておかなければならない。

商品開発におけるマーケティングのステップ_.gif



仮説→「事実の裏をとれ」


的確な結論に導くリサーチ・デザインを行うためには マーケティング課題をどう調査課題に落としこむかが重要になる。調査課題とはマーケティング課題を解決するために、どんな情報を収集し何を明確にして結論に結びつけるかを考えることである。そのためにマーケティング課題(事実)の原因になる事象や仮説を充分整理しておく。

●マーケティング課題例⇒○○の不振、売り上げシェアの減少

 調査課題を考える視点(4Pなどから課題を分解)
 (1) プロダクトの問題 → 味覚の新規性が薄れてきた(味覚が陳腐化してきた)
 (2) ポジショニングの問題 → 競合参入によって相対的に位置づけが変化したのでは?
 (3) 価格の問題 → 顧客のベネフィットに比べ、価格が高い
 (4) 流通の問題 → 店頭でのパッケージ訴求力が薄れてきた。
 (5) ブランドの問題 → 新たなプロモーションにより、ブランド資産が損なわれていないか
 ・・・・・

マーケティング課題を整理する目的で 過去の資産(ベンチマーク調査やオープンデータなどの二次データ)を活用した市場のセグメーテーション分析やポジショニング分析を実施したリ、既存調査だけでは見えてこないターゲット層のリアルな生活実態を可視化するため、簡易エスノグラフィーやブログ・SNS分析などを行うことも有効である。
収集した情報は、上記の視点でブレーンストーミングで熟考・議論される・・・・・。



調査に熟議を生かせ〜新しい民意の収集:デリバレイティブ・ポール手法

先日の朝日新聞のオピニオン欄に慶応大学DP研究センターの曽根教授が議論型意識調査(デリバレイティブ・ポール)という世論調査の手法を紹介していた。

これは (1)まず無作為抽出で通常の意識調査(世論調査)を実施、その回答者の中から参加者を募り (2)ある場所に集まってもらって小集団で議論をする会議を数回実施し、最後に (3)再度同じ質問をするというもの。
回答の変化を追うことで、通常の意識調査での瞬間的な民意とは異なる、熟議を経た深い民意がわかるという仕掛けだ。

この調査手法に適するのは、じっくり考えて判断したほうがよいテーマで、例えば「年金問題」や「原発問題」など中長期的な視野に立つものは合っているという。

我々リサーチの業界ではデルファイ法がこれに近いが、参加者(対象者)のイマジネーションが刺激され、かつ時間という空間の中で熟考される結論の導き方は テーマによって有効な方法論だと考える。

マーケティング調査でも On line communityなどを使って テーマについて議論して刺激し合いながら 結論を収斂するという発想も面白いかもしれない。
 
 
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