株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
新しさはイノベーションの核心にあたる種子である。歴史も文明も連続的なものではなく、新しさを種子として飛躍的に変化し、偶然性さえも契機にして流動していくものである。この新しさと偶然性の場所が「マーケット」である。 マネジメントは流動する歴史と文明を予測し制御する野心に支えられている。ドラッカーのマネジメント論の意義もそこにある。経営者の管理術でも組織論でもない豊かさがある。 |
「能」を「ビジネス」「方法論」、「観客」「場」を「マーケット」、「偶然性」を「タイミング」「チャンス」、「人気」を「評価」「受容性」として読めば、世阿弥の言葉は、競争社会を生きる我々への提言とも読める。
『21世紀に重要視される唯一のスキルは、新しいものを学ぶスキルである。それ以外はすべて時間と共にすたれてゆく』
『イノベーションとは、昨日の世界と縁を切り、明日を創造することである。馴染みの過去を捨てて、リスクをとり、未知の世界へ飛び込むことなしに、21世紀において繁栄することはありえない。』
という金言を残した。
MROC(Marketing Research Online Communityの略)、ショッパーリサーチ、バイオメトリックス(生体反応)調査、ゲーム型リサーチ(Gamification)など、リサーチ業界は、新しい取り組みに花盛りである。
しかし、その意味するところや実現手段を正しく理解しないと、成功は望めないと考える。ドラッカーの教えを忠実に守ると、『強みを生かして、不得手を捨てる』『これまでの発想を体系的に廃棄する』ということになるだろうか。
また、世阿弥の造語の1つに「時節感当(じせつかんとう)※4」という言葉がある。これはタイミングをつかむことの重要性を語ったもので、どんなに正しいことを言っても、タイミングを外せば人には受け入れられないことを伝えている。
内面化の時代に入り、若者やオタクといわれていた者が、表現の場を発見し、すでに市民権を得ている。
このような環境変化が著しい中、リサーチ業界も過渡期にあり、多くの可能性が広がっている。新規事業開発の現場にいる自分自身も、日進月歩の真っ只中で目まぐるしい。
ドラッカーや世阿弥に習うことは多い。常に「創造的(Innovative)なアイデア・提案」を創出することを心がけ、一方では、「タイミングを逸して失敗した」ということがないよう、「時代の空気」「顧客(クライアント)・生活者の心の動き」をつかんで、今後の挑戦や展開に携わっていけたら、と願っている。
※1世阿弥:室町時代初期の大和猿楽結崎座の猿楽師。父の観阿弥とともに猿楽(現在の能)を大成し、多くの書を残す。
※2風姿花伝:世阿弥の著書で、能の修行や演出に関する方法論をまとめたもの。観客に感動を与える力を「花」として表現している。
※3住するところなきを、まず花と知るべし:留まり続ける・安住することなく、変化することこそが芸術の中心である、という意味。
※4時節感当:「時節」とは、能役者が楽屋から舞台に向かい、幕があがり橋掛かりに出る瞬間のこと。幕がぱっと上がり、役者が見え、観客が役者の声を待ち受けている、その心の高まりをうまく見計らって、絶妙のタイミングで声を出すこと。世阿弥は、正しいだけではだめで、その正しさを人々に受け入れてもらうタイミングをつかむことが必要と説いている。
このような環境変化が著しい中、リサーチ業界も過渡期にあり、多くの可能性が広がっている。新規事業開発の現場にいる自分自身も、日進月歩の真っ只中で目まぐるしい。
※1世阿弥:室町時代初期の大和猿楽結崎座の猿楽師。父の観阿弥とともに猿楽(現在の能)を大成し、多くの書を残す。
※2風姿花伝:世阿弥の著書で、能の修行や演出に関する方法論をまとめたもの。観客に感動を与える力を「花」として表現している。
※3住するところなきを、まず花と知るべし:留まり続ける・安住することなく、変化することこそが芸術の中心である、という意味。
※4時節感当:「時節」とは、能役者が楽屋から舞台に向かい、幕があがり橋掛かりに出る瞬間のこと。幕がぱっと上がり、役者が見え、観客が役者の声を待ち受けている、その心の高まりをうまく見計らって、絶妙のタイミングで声を出すこと。世阿弥は、正しいだけではだめで、その正しさを人々に受け入れてもらうタイミングをつかむことが必要と説いている。