株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
GI部 ディレクター インタビュアー 吉田 聖美
念願の
スマートフォンを手にしました。
以前から買いたいという気持ちはあり、商品の選択基準もほぼ確定。あとはいつ買うかだけが課題となっていた私。どの商品がいいか悩んでいるわけではなく、「今買わなきゃ」と思えるときが来るのを待っている、まさに「買物欲」が高まるのを待つばかりの状況でした。
自分の行動を振り返ったときに、「買いたい」という気持ちの後押しは周りの声でした。声と言うよりも、周りの普及率ですね。何となく、次に買い換えるならスマートフォンという思いが確立されていました。
商品の選択基準は、これまでの携帯電話でも同様の基準で選んできたことだったので、ブレはありませんでした。2〜3種類に決めた状態で、ショップに行き、実機を触って確かめた時点で心は決まっていました。
私は機械に疎いこともあり、見た目重視なので、デザインと、持った感触がスマートフォン含め携帯電話選択時の十分条件です。そこに辿り着くまでの、選択肢の土俵に上るための必要条件が防水。これは、ここ最近の携帯電話選びで変わっていません。選択時に参考にする要素がとても少ないので、あまり選択に時間はかかりません。
ところで、このタイプ、調査では
若干厄介なタイプです(笑い)。
商品選択時に「パッケージで何となく」「見た目が可愛くて」「持ったときにピンと来たから」という人です。他の商品含め、どういったデザインや触感に惹かれる傾向があるのかを深堀していくことが、この人こういうものが好きなんだろうなという結論に辿り着く道なのですが、雲をつかむような話からスタートするので、時間と労力がかかります。良い(かどうかはわかりませんが)モデレーター、良い対象者に有らず、です。。。
ショップで、実機に触り、買いたい商品は決まっても、即買うほどの気持ちの高まりはなかったので、今使っている携帯電話が壊れたら考えようくらいのつもりでした。その気持ちを後押しし、購入に向かわせたのは、
ショップ店員の一言が要因でした。
「これを買いたいと思っているんですけど」とカウンターで相談してみたのですが、私が買いたいと思っている商品の良い点を伝えつつ、懸念点をフォローする接客(ワンセグは付いていないが大丈夫ですか?)。
それだけでも商品アピールとしては有効ですが、私の心を動かしたのは
【今なら、発売されたばかりのオレンジ色が、オンラインショップ限定でありますよ。お客様の今の携帯電話を拝見して、オレンジがお好きではないかと思いまして】…との提案でした。(私がそのとき使っていた携帯電話は黄色です。そしてオレンジは大好きな色です)
「今なら」「限定」「あなた向け」というメッセージを3つも入れたお薦めを受けたことで、私の「今買いたい」欲は一気に高まり、すぐに購入してしまった次第です。店員の方は、私が買いたいものは決まっているが、後押しがなくて買い渋っている状況であることがわかったのでしょう。選択を肯定しつつ、しっかりと後押しをしてくれました。
今回私が経験したような、具体的なエピソードを絡めての記憶を
「エピソード記憶」と言います。人は忘却する生き物であり、人が瞬時に覚えられる最大の情報量は7まとまり程度という話や、意識が向いた程度の内容では人は20秒程度で記憶したことを忘れてしまうという話もあります。
インタビューの場に呼んだ時点でトライアル理由を曖昧にしか語れなくても不自然ではないのです。逆に、トライアル理由を鮮明に覚えていて、すらすらと語る方はおおよそ
エピソード記憶として定着していることが多い気がします。この
エピソード記憶、人につい伝えたくなってしまう、という点も特長である気がします。
人に伝えることで、また自分の中の記憶として定着し、更に人に伝えていく、口コミの源泉と思うと、商品と消費者の間にエピソード、物語を提供することの重要性が見えてきます。心理学の考え方ではあるのですが、今回の自分の行動を顧みても、マーケティングでもうまく使っていきたい概念の一つだと思います。
余談ですが、オンラインショップで購入してしまったため、旧携帯からのデータの移行、プラン変更等、ショップでやってもらえるはずのことを自分でやる必要性が生じました。機械に疎いからこそ、デザインで選択してしまったのに、通常の機種変更以上に自分で機械に対峙しなければいけないという矛盾を発生させてしまい、右往左往しています・・・