株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
フィールドワーク部 小林祐児(コバヤシ ユウジ)
ちなみに、このように事象そのものではなく、事象に対する人々の知識や認識、言説を考察の対象とする分野を社会学では「知識社会学」と呼ぶ。
T.情報社会論のこの「お家芸」の骨子にあるのは社会を情報技術のアナロジーで語ることによって「社会の不透明さ」を「技術の明確さ」で埋め合わせる、という構造であり、 |
まずこの前編では、T. の論点から論ずることにする。
さてまずは、情報社会論としてどういったことが言われているか確認しよう。新しい技術と社会についての語りでは、例えば次のような言い回しがされてきた(されている)。
・「階層的な社会/組織から、柔軟でフラットな構造を持った社会/組織へと変化する」
・「時間と空間が縮減され、世界全体がコミュニケーションによって一つになる」
従来の社会を大型計算機のような階層的で集権的な情報技術で例えておいて、情報技術の方が変化すれば(ネットワーク化すれば)それに合わせて社会の変化した(ネットワーク化)が起こるかのように喧伝する。
しかし、集中型の大型計算機にしても分散的なネットワークにしても、情報技術のモデルの明解さ、理解しやすさと比べたとき、現実の社会ははるかに複雑である。
(1)そうした無理のある技術のアナロジーを現実社会に当てはめつつ、
(2)技術が変化するにつれ社会も変化する、という論理を繰り返す。
(2)技術が変化するにつれ社会も変化する、という論理を繰り返す。
「階層的社会」も「ネットワーク社会」も、現実の社会からかけ離れたアナロジーでしかないため、実社会との検証作業を省略しながら、技術予測に基づいた遠くない未来の夢だけが語られる。
むしろ、曖昧で実態が定かでないからこそ、技術のアナロジーは「将来はこうなって欲しい」という願望に引きずられたまま、社会の姿へと強引にあてはめられやすい。
たしかに、複雑で不透明な社会の構造に比べれば、情報技術は見えやすく、イメージしやすい。将来の動向も社会に比べれば予想がつきやすく、実際に技術を用いている具体的な場面もすぐに想像できる。
今や誰しもがEメールやSNSや携帯電話を使い、ラジオやテレビの視聴を体験している(すこし前の世代なら、パソコン通信やポケベルを〈新技術〉として経験してきた)。情報技術を社会のアナロジーとして使うことは、社会を具体的に分析する代わりに、そうした「テクノロジーの明解さ」を持ちだし、「社会を理解した気になりたい」という欲望の現れでもある。
論理を逆さにしてみれば、現代社会というのは、「社会をもっと明確さに捉えたい」という欲望を不断に喚起しつづけるような、漠然とした不安感を抱かせる不透明な社会とも言えるかもしれない―――。
今回、ここまでのエントリでまずT.の論点、つまり情報社会論の論理的な骨子(とその怪しさ)について述べてきた。
続くU.の論点は、「技術・メディアが社会を変える」という繰り返しの言葉が我々に新しさと魅力を感じさせ、また繰り返されることになるメカニズムについてである。その所以を次回のエントリ〈後編〉で考えてみたい。
@) 今回のエントリ執筆にあたって大きな参照点としたのは佐藤俊樹著『ノイマンの夢・近代の欲望――情報化社会を解体する』(講談社選書メチエ)である。メタ情報社会論の代表的名著であり、1996年の刊行にも関わらず2010年に補論を付されて『社会は情報化の夢を見る』として河出文庫から文庫化された
【参照文献】
McLuhan, Marshall , 1964, Understanding Media: the Extensions of Man, (=1987,栗原裕・河本仲聖訳『メディア論――人間の拡張の諸相』みすず書房.)
佐藤俊樹,1995,『ノイマンの夢・近代の欲望――情報化社会を解体する』(講談社選書メチエ)
続くU.の論点は、「技術・メディアが社会を変える」という繰り返しの言葉が我々に新しさと魅力を感じさせ、また繰り返されることになるメカニズムについてである。その所以を次回のエントリ〈後編〉で考えてみたい。
@) 今回のエントリ執筆にあたって大きな参照点としたのは佐藤俊樹著『ノイマンの夢・近代の欲望――情報化社会を解体する』(講談社選書メチエ)である。メタ情報社会論の代表的名著であり、1996年の刊行にも関わらず2010年に補論を付されて『社会は情報化の夢を見る』として河出文庫から文庫化された
McLuhan, Marshall , 1964, Understanding Media: the Extensions of Man, (=1987,栗原裕・河本仲聖訳『メディア論――人間の拡張の諸相』みすず書房.)
佐藤俊樹,1995,『ノイマンの夢・近代の欲望――情報化社会を解体する』(講談社選書メチエ)


