株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
代表取締役社長 澁野 一彦
1980年代半ば まさに時代がバブルの真っただ中を突き進んでいる時に、『「分衆」の誕生』(博報堂生活総合研究所)と『新「階層消費」の時代』(小沢雅子:日本長期信用銀行調査部)という 以後の消費社会の格差を予兆する本が相次いで出版された。
「ニュープア」は分衆の中でも、教育費や住宅ローンによって生活にゆとりがないと感じているグループである。
そして「ニューリッチ」は収入が欲望を満たしてなお、ストックを生むことのできる収入の層である。
あの時代から30年を経て、格差社会はますます拡大し、現在シニア社会にも階層化が及んでいる。
現在のシニア層は、昔に比べ金も時間もあり人数も多く、シニア層を対象にしたビジネスチャンスは大きいと言われている。確かにシニアの平均資産は下の世代より多いが、30年前の資産形成段階(家族成長期)で、格差社会を経験している今のシニア層は 結果として経済的な格差も大きくなっている。
この年代の全体の7割が現在の生活について概ね満足しているものの、十分に満足している人は1割にも満たない。
また「生活に余裕がある方」と答えた余裕者比率41%に対し、「余裕がない方」と答えた非余裕者比率は58%にのぼり 余裕者比率を大きく上回る。
この暮らし向きに関する2つの指標 生活の「余裕度」と「満足度」を重ねてみると(余裕の有無別に満足度を分析)、シニアの暮らし向きは、生活に「余裕があり満足している」(40%)、 「余裕はないが満足している」(31%)、「余裕がなく不満」(28%)の3層に分化する。
生活意識の上でも シニアの"階層化(格差)"が着実に進行していることがわかる。
総収入、貯蓄額とも、60〜64才世帯(高齢者予備軍)がピークで高齢化するにつれ、目減りしていく。男性全体の平均総収入は476万円、平均貯蓄額は2040万円。いずれも60~64才世代が最も多い。
女性の平均総収入は327万円で男性平均を下回るが、貯蓄額2230万円と男性世帯より多め。
*いずれも夫婦世帯(1人世帯は単独)で総収入、貯蓄額を聴取
一方「1000万円未満」世帯も45%。資産も世帯間格差が大きいのが特徴である。
かつて「ニュープア」層がゆとりのない生活の中から、新しい生活意識に基づいた新しいライフスタイルを築いたように、現在のシニア層もそれぞれの暮らし向きや経済状況に応じて"賢い消費行動"を実践している
シニア層は「品質、価格を比較して買う」「見た目より使いやすさを重視する」「クーポンや店のポイントカードをよく利用する」「ネットで注文する通販に抵抗が無い」など "賢く買い物を楽しんでいる"様子が窺われる。
また「買い物には自分のバッグを持っていく」「過剰包装品はなるべく買わない」など、"エシカルな" 買い物行動もこの層の特徴。特に女性でこの傾向が強い。
注)当調査はWebモニター(ネット利用者)対象の調査である。
この「買い物に対する意識・行動(全40項目)」を因子分析にかけると 「低価格経済性志向」「比較検討内容吟味」「付帯サービス、カード積極使用」「シニア仕様利便性重視」や「環境重視エシカル」などの消費志向が抽出された。
以前 シニアは健康不安、経済不安、孤独不安や介護・・・など将来に対する生活不安の増大化や、経済悪化による金融資産の目減りの痛い体験があるため 「無駄な出費はしない」「余計なものは買わない」「高額商品は買わない」と書いたが、実際消費する場面でもいろいろな流通のサービスや情報を駆使しながら自分の身の丈にあった"等身大の消費活動"を実践している姿が想像できる。
かつて中流意識が強かった頃は、中流を狙うと「上」「下」もついてきた。しかし階層社会では「中」を狙うと「上」も「下」もついてこない。シニアの社会も階層化し、経済状況による格差だけでなく趣味嗜好も多種多様である。(個人の嗜好多様化)
シニア市場は、マスマーケットではなく多様な生活背景や個人の嗜好性に根差した階層化した社会であることを常に認識しておかなければならない。
注)当調査はWebモニター(ネット利用者)対象の調査である。
この「買い物に対する意識・行動(全40項目)」を因子分析にかけると 「低価格経済性志向」「比較検討内容吟味」「付帯サービス、カード積極使用」「シニア仕様利便性重視」や「環境重視エシカル」などの消費志向が抽出された。
次回は前述の購買意識・行動の因子を使って作成した「シニアの購買行動クラスター」とその行動特性について考察する。
続く


