株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 ディレクター インタビュアー 梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
しかしながら、まれに起こってしまう。特に、〈ユーザー(新商品や新サービスの現在利用者)〉と〈ノンユーザー(新商品や新サービスの認知非購入者)〉の認識は、曖昧であることが少なくない。
また、〈ノンユーザー(認知非購入者)〉グループで、すでに利用経験があるのに「使った記憶がない」、あるいはその商品やサービスを知っているはずなのに「みたことがない」「はじめて見たように感じてしまう」という対象者がインタビューの現場に紛れ込むケース。 ― 例(2)
それは、なぜであろうか。【対象者条件違い】が生じる現象について、1つの仮説を呈する。
"既視感(deja vu:デジャヴ)*1"や"未視感(jamais vu:ジャメヴ)*2"という事象から、説明できるのではないか。
「記憶の錯覚」ともいえる
という語は、超能力研究をしていたフランスの超心理学者・エミール・ブワラック
がシカゴ大学在学中に執筆した「超心理学の将来」(L'Avenir des sciences psychiques, 1917年)の中で提唱され、20世紀、多くの心理学者らによって研究された。


視覚的な印象だけでなく、「経験」として捉えることもある。
当稿では、"デジャヴ"や"ジャメヴ"を引き起こす原因の諸説のうち、幾つかを紹介する。
―― 本来脳内で連動して発生する「知覚」、そして「認識」という2つの現象がズレて発生することが原因であるとし、そのズレは「疲労」「時間の経過」によって生ずるという説。
"デジャヴ""ジャメヴ"の経験自体が落ち着かない経験として強く記憶に残り、記憶を体験した状況(いつ、どこで、など)についてははっきりしないケースで、この"体験している、もしくは体験していない事象"は、脳の意識的に働いている部分が情報を受け取る前に記憶に蓄えられ処理されるから、"長期記憶と短期記憶"*3の重なり合いや混同が原因と考えられている。
筆者も、「実生活の中で見たり聞いたりした認識がないが、実は知らない間に過去に記憶に焼きつけられていたのではないかという不思議な感覚におちいること」や「TV・雑誌で得た情報や映画・本で疑似体験した知識が変容・再構成を起こして、見たことがあるかも・・と誤認するケース」はある。
*1デジャヴュ、デジャヴdeja vu: (フランス語で「既に見た」の意味):実際は一度も体験したことがないのに、前にも見たことがある、かつてどこかで体験したことのように感じること。一般的には、その体験を「よく知っている」という感覚だけでなく、「確かに見た覚えがあるが、いつ、どこでのことか思い出せない」というような違和感を伴う場合が多いと言われているが、原因は解明されていない。
*2ジャメヴュ、ジャメヴjamais vu(フランス語で「未だ見ていない」の意味):すでに経験している事柄(既視)を、未だ視ていない感じがする、初めてのように感じてしまうこと。見慣れたはずのものが未知のものに感じられること。
*3長期記憶と短期記憶:メルマガ第14回「マーケティング対比思考"長期記憶と短期記憶"」を参照。