企画部 アシスタント・ディレクター 小林祐児
スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」、
茂木健一郎「脳を活かす勉強法」…
まず、概況として確認できるのは、「人生訓」「自己啓発書」といったジャンルの出版点数が、戦後ほぼ一貫して増加しているという事実だ。母数となる出版総数も増加しているとはいえ、それ以上の増加率でこれらのジャンルの出版点数は伸びてきている。早くも、この傾向から早くも「社会の心理学化」と共振している印象を受けるのだが、それはひとまず置いておいておく。
戦後日本における、自己啓発書の担い手たちは誰だっただろうか。
それは、伊藤整、三島由紀夫、三木清などの哲学者・文学者が中心であった。さらにそこから、松下幸之助から三鬼陽之助など、現在でもビジネス界で神格化されている実業家や経済評論家へと自己啓発書の書き手は移行していく。
好景気に跋扈する消費主義の浮ついたムードの中で、享楽的な軽薄さから精神的な豊かさを求める願望が芽生えてくる。そうした「心の充実」を求める願望にフィットしたのが、河合隼雄「こころの処方箋」 五木寛之「生きるヒント」、永六輔「大往生」などのベストセラーであった。こうしたバブル期の「心への注目」を経て、日本の自己啓発本は次のフェーズへと向かっていくことになる。
そのメルクマール的出来事が、春山茂雄「脳内革命」(1995)の大ヒットであった。
そして、「脳内革命」の第2の特徴は、そうした脳科学的なロジックと、「人智を超えた」超越的法則のきわめてアクロバットな接合がなされていた点である。
「これはたぶん、神様が理想とする生き方にあった者だけが生き残れ、それにあわない者はできるだけ消していこうとするメカニズムが、遺伝子というかたちで身体の中に残されているのだと私は解釈しています。」 『脳内革命』:29頁
今みた脳内革命の2つの特徴をふまえつつ、前回の議論を思い出そう。
【主な参考文献】
牧野智和「自己啓発の時代――「自己」の文化社会学的探求」


