株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 アシスタント・ディレクター 小林祐児
このボードは、図のように指を置いた瞬間、自分の指の先から光が発されているような感覚に陥るように描かれている。また、その下の瓶が描かれているボードでは、瓶の中の赤い三角形の頂点に人差し指を置くことによって、鑑賞者の指が瓶の中で浮遊するボールのブランコの支点になっているような感覚が立ち上がってくる。
今回は、連載タイトルを裏切り、社会学から少し離れたこの「アフォーダンス」とデザインについて考えてみたい。
「アフォーダンスaffordance」とは、アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンが発明した、動物の知覚に関わる概念である。1904年にオハイオ州に生まれたギブソンは、ゲシュタルト心理学や人間の視覚の研究から出発し、知覚全体についての新しいパラダイムを提唱した業績で、認知心理学以外のフィールドでも広く知られている。
図のように、これは薄いプラスティック板なので、板と板の間には、なんの物質も存在しない。だが、実際に片方から見ると、(b)のように「面」で埋められたトンネルが見える。この「面」は、一体何なのだろうか。
こうした視覚研究の延長線上に、ギブソンは「刺激−情報処理モデル」を転換させるアフォーダンスの発想を発展させてきた。
では、アフォーダンスとはなんだろうか。
2.アフォーダンスは知覚者の「印象」や「知識」のような主観的なものではない。
アフォーダンス理論が面白いのは、行為者の「行為の可能性」を与えるものを、行為者の「主観」でも「主体」でも「心」でもなく、「モノ」の側に帰属させたことだ。ギブソンの発想は、90年代ごろから日本にも紹介され、一部の熱をもって迎え入れられた。
さて、調査の話に移ろう。
調査における「デザイン」でまず話題になるものといえば、まずは「報告書」のビジュアルについてではないだろうか。
こうやって比較すれば、下のグラフのほうが美しいし見やすいのは一目瞭然である。ただ、実務の場面を思い返してみれば、納期に追われる中で、「たんなる伝え方の問題」「内容は同じだから」と自分に言い訳しつつ、上のようなクオリティで妥協したことは無いだろうか。
インターネット調査における「選択肢のデザイン」についてだ。
「デザインの思想」というと、多くの人が「ユーザーに優しい」「誰でも使える」といったデザイン志向性のことを想起する人が多い。「ユニバーサルデザイン」の旗印のもとに、現代デザインの志向性は「だれでも、どこでも」が中心になって議論されることが多い。アフォーダンスについても、ノーマンの著作を経て、そのような「ユーザーセントリック」な思想を示すものという誤解を受けがちだ。
リサーチと「デザイン」の関係は、上に挙げたような「見た目」だけの話に限らないはずだ。質問紙も、会場調査も、グループインタビューも全て環境と人間の行為の関わりからなる営為であり、その全ての面でデザインは関わってくる。掘りごたつ式のグループインタビュールームは、実際にグループダイナミクスを活性化させるのか。
【参照文献】
「誰のためのデザイン?」D.A.ノーマン
「アフォーダンスーー新しい認知の理論」佐々木正人
「レイアウトの法則」佐々木正人
「生態学的視覚論」ジェームズ・J・ギブソン
「知覚ワールドの知覚」ジェームズ・J・ギブソン
「生態学的知覚システム―感性をとらえなおす」ジェームズ・J・ギブソン


