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JMAマーケティングコラム 第38回「『総中流時代』から『格差社会』への実感。」

2015/02/13

タグ:澁野 一彦 総中流時代 格差社会 中流意識

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦

■日本人の「中流意識」は根強いが・・・。


30年前に「1億総中流」と言われたように、日本の社会では、ほとんどの人が「自分の生活は中流である」と考えているとされてきた。それが今は、日本人の「中流意識」が崩壊し、所得格差が進行、貧富の差が広がり、「格差社会」に変わってきたと言われている。

社会学者である佐藤俊樹東京大学教授は、2000年に出版した著書『不平等社会日本〜さよなら総中流』で、「高度成長期の日本は努力が報われる社会だったが、近年は、子の職業や所得水準が、親のそれによって強く規定されるようになってきた。親と子の地位の継承性が高まったことで、中流の可能性が失われつつある」とデータを用いて解説している。

予備校の受講生の追跡調査では、東大生の親の平均年収はトップクラスであり、すでに生まれながらにして差がついているという。
また、昨年(2014年)厚労省がまとめた「国民生活基礎調査」によると、日本人の「相対的貧困率」は16.1%で日本人の6人に1人が貧困層と発表、近年の所得格差を問題視している。


■では、本当に日本人の中流意識は崩壊してしまったのだろうか?

内閣府は、1950年代から毎年「国民生活に関する世論調査」で国民の「生活程度」を聞いている。回答者は、自分の生活状況を「上」、「中の上」、「中の中」、「中の下」、「下」の5つの選択肢から選ぶ

2014年の最新のデータでは、「中の中」が56.6%と最も多く、「上」は1.2%「下」は4.6%「中の中」に「中の上」12.4%、「中の下」24.1%を加えると93%強大半が「中分類⇒中流意識」になる

ここでは敢えて、「中の中」を中流と仮定し、「中の上」を「上」に、「中の下」を「下」に加えた表を作成した。

表1:中流意識
中流意識の変遷.gif
※内閣府「国民に関する世論調査:生活程度」

高度成長期の1975年は、10年前(1965年)から「中の中」が10ポイント余り増加し、6割を超えた。
1979年(昭和54年)の「国民生活白書」では、70年代に国民の中流意識が定着したと評価している。
その後、バブル景気真っ盛りの1985年は「中の中」は減少に転じ、「中の下+下」が多くなる。この時代から、格差が始まってきたといえる。

人や価値観も時代ごとに変わってきているので一概に言えないが、それ以降(1995年から2010年まで)の傾向を見ると、「中の中」は少しずつ減少傾向にあり、その分「中の下+下」と「上+中の上」の比率が伸びていることがわかる。

2014年は、「中の中」がまた増加しているが、「上+中の上」も10%を超え一定の比率を確保するようになっている。日本人は相変わらず中流意識は強いが、中流の中で区分けが形成され、格差・階層化が生まれ始めている


■「暮らし向き」の格差の実態

「中流意識」はまだまだ日本人の中では健在であるが、実際の生活はどうなのだろうか。
このコラムでも何回か取り上げたが、日本人の生活意識に関する2つの指標《経済的な余裕度》と《生活の満足度》を重ねて、45歳以上の人々の暮らし向きに関する意識を検証した。(『シニアライフ・センサス2014』より)

「経済的余裕があり生活に満足」⇒「リア充」33.4%、「経済的余裕はないが生活に満足」⇒「プア充」35.1%、「経済的余裕がなく生活に不満」⇒「リア不充」28.6%と3分割。(45歳以上全対象者の数値を掲載)
日本人の「暮らし向き意識」は3層に分化し、中流意識が根強く残るものの、明らかに階層が生まれている。生活意識の上でも 日本人の"階層化(格差)"が進行していることがわかる。


表2:経済的余裕度×生活の満足度(45歳以上)                  
2014年プア充の割合.gif
※JMA『シニアライフ・センサス2014』(昨年7月実施)


■経済資源(貯蓄額)の格差を実感する

次にこの3層別にストック(貯蓄額)を見ると、「リア充」の平均貯蓄額は3,431万円で、全体の平均貯蓄額である1,741万円(45歳以上全体:回答拒否を除く)のほぼ倍額。3,000万円以上も全体の4割強を占め、実態としてはかなり潤沢である。

一方「プア充」の平均貯蓄額は959万円また「プア不充」は757万円と、いずれも「リア充」と比べて、大きく差が開いている。意識の上でも「暮らし向き」の充実度に関しては、ストック(経済資源)が少なからず影響していることがわかる。



●生活の「暮らし向き意識」での階層化が進行と述べたが、実際の「経済資源」においても格差は存在しており、それは、彼らの生活意識、そして消費意識・行動にも大きく関わっている。

「プア充」は"手堅く合理的で賢い消費スタイル"を実践している。(『シニアライフ・センサス』参照)

図表3:自身・配偶者の貯蓄総額(2014版)
2014年自身・配偶者の貯金割合.jpg
※弊社の『シニアライフ・センサス2014』(昨年7月実施)


相変わらず自分を中流だと思い続けている日本人が多い中で、経済資源の格差は着実に顕在化しつつある。

1970年、80年代の「総中流時代」までは、昔と比べれば随分豊かになったと「中流」に対してポジティブなイメージを抱けた時代であった。それが幻想であったことに気が付いた。
今は自他の上下関係が見定めやすく、みんなが確信的に自分の階層を理解し、格差を受け入れて生きる時代になったということだろう。

かつて中流意識が強かった頃は、中流を狙うと、「上」も「下」もついてきた。しかし、「階層社会」ではポジティブイメージを失った?「中(流)」を狙っても、誰もついてこない。
今日本は、経済資源の格差だけでなく、多様な生活背景や個人の趣味・嗜好で形成される"多層化社会"になっているから、なおさらである。

当コラムで、シニアで今後「プア充=経済的余裕はないが生活は満足」が増えると指摘したが、「プア充」の増加は、少子高齢化が進行し所得格差が広がる日本社会全体にも当てはまる。

●自身の「負を受け入れる」ことで「生活を充実させて生きよう」という想いで消費を実践する「プア充」の 意識・行動を分析することは、来るべき本格的な「格差社会」の一つの指針になるのではと考えている。

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