株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
定性調査部 シニア・ディレクター インタビュアー 吉田 聖美
あるブログのご紹介。「子育てを大変だと感じる本当の理由。休む暇がないことが大変なんじゃない。」
そんな言葉から始まるブログを見かけた。
子育て中の方だけでなく、「子育て、って何が大変なの?」と感じる方に是非読んでいただきたいのだが、私がこのブログを紹介したいと感じた理由は、子育ての大変さを知ってもらうこと以外にもう1つある。
ブログの内容を簡単に紹介する。
自分が体験した1コマ。男友達に「子育てしているとゆっくり座って休む暇もなくて大変、と聞くけど、ゆっくり休む暇がないのは働いていても同じ」と言われた。
その場では何も言い返せなかったが、釈然とした思いを抱えていた結果、しばらくしてある自分なりの答えに到達する。
ママたちが大変と感じているのは、「休む暇がない」という時間の問題ではなく、「自分のやりたいことを達成できない、達成感を得られない」という感情の問題なのではないか、と。
※原文に倣って「ママ」と書きましたが、「ママ=子育てする人」「パパ=働く人」とは思っていないので、そこは「子育てを主にやっている人」と捉えて下さい。
ブログ全体を読んで、話の展開、思考の深め方が上手いと思ったのが、このブログを紹介したいと思った要因だ。
「●」で思考プロセスを列挙し、「⇒」ではその思考・説明のポイントを記載してみた。
●「子育て」と「仕事(子育て以外)」を比較して、「仕事でも時間がなく動いているのは同じ」と「時間」の概念だけでは、子育ての大変さを説明できないと感じる。
⇒「時間」を軸とした説明に疑問を感じた理由の明記。
●自分が子育てを経験して初めて感じたストレスは「自分の意思とは無関係にやろうとしていたこと、したかったことを遮られる」ことだった。
⇒自分事として考え、子育て特有の場面から、共通の要因を見つける。
●共感性の高い場面を呈示し、読み手の共感を得る。
〜【引用】同じ昼間の休憩1時間でも自分のやりたいように過ごせ、すべてを自分の思い通りに行動を完了させることのできる1時間と、自分のやりたいことがあっても途中で子供に呼ばれたら中途半端で子供のもとにかけより終わってしまう1時間は違うといいたい
⇒この前までの展開が冷静なので感情的な言葉が、思いが伝わるもの、当事者意識を感じさせるものとして生きてくる。
●「やろうとしていたこと、したかったことを遮られる」となぜ大変さを感じるのだろうか、ともう1段階考察。
⇒気付きの更なる読み込み。思考を深めていくと横道に逸れることもあるのだが(笑)「大変さ」という軸は維持。
●到達した結論は、「達成感を得られないことが子育ての大変さ」。達成感が得られないと人の感情に必要なドーパミンの分泌が促されないらしい、という情報を持ち出して、達成感を得られない、24時間365日ドーパミン不足が続くことの大変さを説明。
⇒単なる個人的な気付きではなく、実際、欲求の達成が満足感につながることは学術的にも立証されているという事実の提示感情だけでなく、事実として引っ張ってくることができるもの(根拠)がある、というのは大きいですよね。
●「子育ての大変さ」を「1つの事柄でさえなかなか達成ができない」職場のシーンを例に出して説明。
~提出書類を部長に渡し、はんこをもらうという簡単なことのはずなのに、風が吹いて書類が飛ばされ、同僚がコーヒーをこぼし、・・・「あーもう!!」ってなりますよね
⇒立場・考えを伝えるため、伝えたい人の状況に置き換えて説明。
●ママたちが一人になる時間がほしいのは「子供から解放されたいから」ではなくて「自分の達成感を一人でちゃんと味わいたいから」なんですよ、と読み手へのメッセージで話を締める。
なるほど、なるほど。仕事上、自分の意見を相手に伝える場面も多いが、そのときに常に相手のことを考えて、こういえば「実感として、自分事として」わかってもらえるのでは、という思考をちゃんとしていたのかな、自分の思いを伝えつつ、事実や具体例もちゃんと盛り込めていたかな、と考えた。
モデレーターはクライアントと対象者を繋ぎ、両者の橋渡しをする仕事である。理解を進める、深めるための言葉の使い方、話の進め方、というのを今後も考えていきたい。
ちなみに、子育ても仕事も経験している身としては、「大変、大変」と言っている人に対する対応としては、子育てでも仕事でも共通で、「大変なんだね(共感)何かできることはある?」以上のものはないと思っている。相手を100%理解することは不可能なので、寄り添う姿勢を持つことが重要と思っているのだが、いかがでしょうか。(これはインタビューとも共通するところですね)