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リサーチトピックス 第8回「常識と新しさの融合」

2016/01/05

タグ:P値 使用禁止 常識 牛堂雅文

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 ディレクター 牛堂雅文

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
今回は過ぎ去った2015年などリサーチ業界のトピックを振り返りつつ、筆を進めて行きたいと思います。

■P値が使用禁止?

2015年、個人的に衝撃の大きかったニュースが以下のものでした。

帰無仮説検定など統計でおなじみの「P値」が、米社会心理学ジャーナルで使用禁止となる。(エディテージ・インサイトより)
※P値とは帰無仮説が正しいという条件の下で、検定統計量の値より大きな値が得られる確率のこと

もちろん、学会でも実務でも有意差検定などで「P値」は広く使われており、今すぐ全廃になるとは考えにくい状況ですので、代替手段も含め動向を静観…というのが大方の意見ではないかと思います。

この報道以前にも、P値や有意差検定の方法に対する反対意見は見受けましたので、徐々にそういう思想が広がってきたと捉えるべきでしょう。

ただ、「今まで常識だ」と思っていたことが、いつの日にか覆される可能性があることを身近に感じ、衝撃を覚えました。


■サンプリング理論は不要か?

次に、「調査においてサンプリング(抽出)の仕方が大事」というのが、我々リサーチャーの基本的な見解でした。「n=300sの調査」をしたとして、その300sは、日本の約1億2千700万人の意見を的確に代表するようなサンプル構成になっているのか?という話です。

しかし、多様性の時代になり、ニッチマーケットの発想が当たり前のものとなります。そして、ビッグデータの時代になり、顧客全員、アクセス者全員など「全数のデータ」を扱うことが可能になると「サンプリング誤差」というものが存在しなくなります。

実際には、ビッグデータだからと言っても、データ取得方法による偏りもあり得ますし、そもそも全数データで分析せずに「抽出データで分析する」というアプローチもあるので、サンプリング理論が無意味にはなりません。

参考:「ビッグデータかサンプリングか-起き始めている発想の転換」(2014年1月 ZD Net Japanより)

サンプリング理論は不要ではなく、「使われ方が変わる」のではないでしょうか。


■A/Bテスト

マーケティングリサーチでは、プロダクト調査、デザイン調査など様々なシーンで「P案」、「Q案」、「R案」など複数案の優劣を評価する手法を用いてきました。(「P/Qテスト」という言い方はしていませんが)

一方、Webマーケティングの世界では、「A/Bテスト」(エービーテスト)という手法があります。例えば「赤いロゴのデザインA案」と、「緑のロゴのデザインB案」のどちらがいいのかを、実際の顧客などにランダムに2案どちらかを提示し、クリック率、コンバージョン率などで判定し、あっさり優劣の結果を出してしまう方法です。

参考までに、実際にデザインに「A案」とは書かれておらず、見られる危険性がないため、「P、Q、R」など凝った記号にする必要性はありません。

これも、全く新しい概念というわけではなく、デザイン調査の延長線上にあると感じています。ただ、一度決めたらしばらく変えられない印刷物の世界とは、スピード感などで全く異なっています。


■常識と新しさの融合

このように、「今まで常識だ」と考えていたものが変化する可能性があり、自分が考えていた土台が「思ったほど盤石ではなかった」…と感じることが増えました。

一方で、今までの考え方、やり方が全く役に立たない訳でもないことも同時に感じます。
(より長期的な視点では、消え去るものもあるかもしれませんが…)

ここで本稿のタイトルに至ります。「常識」だと思っていたものはいつまでも常識、正解、主流派のままではない…。一方で、「新しさ」の中にかつての「常識」が形を変えて息づいており、死に絶えたわけでもない…。という不思議な感覚があります。


つまり、「古くからある常識、伝統的なもの」も、「新しいもの」も、どちらにも優れた点があり、その長所が融合されて次なる物が創られていく…。我々はその途上にいるので、混乱もするし、ワクワクもする…そう思えてなりません。

これまでの常識が100%そのままではなく、次なる形態を生み出す母体になり、新しいものと融合していく…その時に荒波に揉まれる当事者は、どうしても感覚的に不安定に感じるのでしょう。

2015年には、国勢調査のインターネットでの回答も始まりました。
国勢調査自体は1920年(大正9年)に第1回が実施されており、実に歴史の長い調査として100年近く引き継がれつつ、手法はここで大きな変化を遂げました。いえ、まだインターネット回答は始まったばかりですので、「変化を遂げつつある」のかもしれません。

※【参考】第一回国勢調査(総務省統計局より)


「何を守り、何を変えるか」…という課題はあらゆる商品・ブランド・組織・団体での課題と言えますし、すぐに答えが見つかるものではないでしょう。「組織のDNA」という言葉も以前もてはやされましたが、簡単に「守るべきものはこれだ」とは断言しにくいものです。

しかし、年の初めという機会には、「何を守り、何を変えるか」…そういったことに思いをはせてもみるのも一興だと感じています。



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