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JMAマーケティングコラム 第45回「〜モノに代わる豊かさ〜価値の転換」

2016/01/05

タグ:モノに代わる豊かさ 澁野 一彦 シニアマーケティング

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦

 明けましておめでとうございます。
 本年も「JMAマ−ケティングコラム」、ご笑覧のほどよろしくお願い申し上げます。


◆「めでたさも(豊かさも)中くらいなりおらが春」

200年前、小林一茶が59歳の正月を迎えた時の句である。
新年を迎えるのはめでたいものの、年老いた自分がまた一つ年を取ってしまうのかと思うと手放しでは喜べない。まあ、めでたさも程々(ほどほど)、中くらいといった感じだろうか。自分に置き代えて共感してしまう。

また"めでたさ"を"豊かさ"に変えて見れば、先行きの見通しがつかない閉塞感漂う日本、正月だからと言って浮かれることなく"中くらいの春"を過ごす。まさに今の日本社会の空気感である。

弊社調査(「シニアライフ・センサス調査」:45歳以上男女対象)でもおなじみの、経済的な余裕はないものの、現在は(まあ)満足であると言う『プア充』の人々の気持ちを代弁するような句でもある。


◆豊かさをモノで測れない時代

「爆買い」が昨年の新語・流行語大賞に選ばれたように、隣国の消費意欲は旺盛である。
日本を訪れる海外訪日客は、昨年1,900万人を突破、中国人を中心とした「爆買いインバウンドマーケット」は、いまや日本経済を支える柱の一つとなっている。

一方成長の峠を過ぎて、追われ抜かれる身になった日本では、かつての大量消費社会は幻想となり、今は「モノに代わる豊かさ」という新たな価値の発想(転換)を求められている。
昨年12月から掲載中の朝日新聞のコラム「戦後70年:エピローグ」では、「モノと豊かさの70年」と題し、戦後から今日までの消費社会の変遷を振り返っている。

〜以下同記事より抜粋
つい50年前、日本が経済大国として復興を遂げた原動力は、「豊かさ」への夢であった。高度経済成長期、日本人の夢はモノに向かいはじめ、60年代には「三種の神器」と呼ばれた洗濯機、白黒テレビ、冷蔵庫が普及した。次いで70年代になると、カラーテレビ、クーラー、カーの「3C」が売れた。

この時期、日本国民に一億総中流意識が広まり、モノを持ち、揃えることが豊かさの指標となった。
特に自動車は、豊かさ、ステータスの象徴であった。高級化、高性能化などで頻繁にモデルチェンジを重ね、「いつかはクラウン」といった言葉で国民の上昇志向をあおった。新車販売台数がピークだった1990年は、登録台数が年間770万台を超えた。
ところがここ10年の新車の販売台数は年間500万台前後に止どまっている。背景にはデフレ不況や、若者の車離れがある。維持費がかさむため、自動車を持たない選択をする人も多い。


自動車に限らず、この四半世紀、小売業販売額はほぼ横ばい、また生活者の消費支出額もここ数年伸び悩んでいる。(前出の「JMAシニアライフ・センサス」より) イマ、豊かさの象徴であった「モノや消費」に対する欲望は薄らいでいる。


◆モノに代わる「新たな夢」を探す

「明日への希望は強い経済なくして生み出すことはできない」
我が国の首相は、力強く再度経済成長を国の目標に掲げ、国民所得のアップを公言する。
再び高度成長を目指すことは悪いことではない。ただ現状の日本社会を考えると、賃金が上がっても、それに見合って消費が増えるとは思えない。すでにモノに関しては満たされ、かつてのような「モノ消費」による高成長は期待できない。

『大事なものはそんなにはない。最小限しか持たずに、最大限に豊かな暮らしをする』 という考え方が若者を中心に浸透しつつある。(「minimalism 30歳からはじめるミニマル・ライフ」より)

昨年放映されたNHK「おはよう日本」では上記の考え方を実践する"ミニマリスト"佐々木典士氏の最小限のモノしか持たない暮らしぶりを紹介していた。
彼は36歳(当時)の書籍編集者だが「親世代のようにモノを買うことが豊かさだという結びつきは、僕の中では弱まっている」と言う。彼が著した『ぼくたちに、もうモノは必要ない』は16万部売れた。

彼の趣味はカメラや本の収集だったが、ある時「モノに振り回されている」と感じ始め、10台以上あったカメラを手離し、本も棚ごと処分した。『モノを減らすことで、かえって豊かさがみえてきた。時間ができ、人と比べることもなくなった。モノが少ないと、不思議と、今持っているモノに感謝するようになった』と・・・。
「持てなければ共有する、シェアするという選択肢もある」
今話題の「シェアハウス」や「カーシェア」に代表される"シェアリングエコノミー"もこの考え方の延長にある。

人口問題研究所の試算では、20年後の2045年の人口は一億人を割り、働き手も益々減ると言われている。
国の借金が1,000兆円を超え、経済成長しにくい社会が現実に迫っている今、モノや成長に代わる新しい価値を我々は見つけ出さなければならない。
続く 

■参考資料
・朝日新聞コラム「戦後70年:エピローグ 夢」
・NHKおはよう日本「驚き!"モノを持たない"暮らし