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テキストマイニングの小部屋 第13回「紅白、どうだった!?」

2016/01/05

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 アシスタント・ディレクター 梶山賢一

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて、2016年最初のソーシャルテキストマイニング。季節柄いろいろ興味深い行事があるが、今回は年末に行われた紅白歌合戦について分析を行った。報道によると、2015年の紅白の視聴率は40%を切り、2部制に移行した89年以降最低だったそうだ。
テレビ離れが進んだり音楽の楽しみ方が多様化するなど、紅白にとっては難しい流れがあるように思われるが、筆者の家庭では毎年紅白にチャンネルをあわせることが多く、今回もそれなりに楽しませてもらった。他にもそういう方は多いと思うが、ツイッターではどう言われたのだろうか。

■分析対象:「紅白」という単語を含むツイッター。
         ※RTは除外 ※全件ではなくサンプリングを実施
■対象期間:2015/12/31
■対象件数:16310件
■分析ソフト:株式会社プラスアルファコンサルティング『見える化エンジン』

≪考察インデックス≫
 1.出場歌手の話題の他、アニメ紅白に注目が集まる
 2.「楽しい」「面白い」など、全体としてはポジティブなトーン
 3.アニメ紅白や副音声など、副次的な要素も好評価
 4.歌手への言及量ではμ'Sがトップ



●出場歌手の話題の他、アニメ紅白に注目が集まる

図1−1は、対象テキスト内の文章のワードクラウドである。件数の多い単語は大きく表示されている。また、ここでは、単語の意味合いによって文字色も変えている(赤はポジティブ、青はネガティブ、緑は出場歌手、ピンクは注目トピック)。

図1−1 ワードクラウド
「2015紅白」ワードクラウド.jpg

内容としては、出場歌手に対する言及が多く見られる。また、「良い」「面白い」「最高だ」など、ポジティブな単語も目立っており、全体的には紅白に対して好意的な調子であるようだ。
※おことわり 『Μ'S』は『μ'S』のこと。以下の表記も同様

図1−2は、全体マッピングという図である。単語の位置に意味はなく、単語同士のつながりから全体の傾向を読み取るものだ。


図1−2 全体マッピング
「2015紅白」ワードマッピング.png

右下の島になっている部分からは「紅白を見た」という記述を中心に、ガキ使(=「ガキの使い」というダウンタウンの番組)とのつながりも見られる。他の2つの局では格闘技番組が放送されていたが、それらは上位には表れていない。
左下の島にはアニメ紅白への好評価が見られる。また、中ほどにAKBへの言及もあり、サプライズとのつながりがある。(ちなみに、サプライズとは前田敦子と大島優子が飛び入り参加したこと)


●「楽しい」「面白い」など、全体としてはポジティブなトーン

図2は、ポジティブな単語とネガティブな単語それぞれのランキングである。上位30位までを表示している。

図2 単語ランキング
 「2015紅白」単語ランキング前半.png
「2015紅白」単語ランキング後半.png

ボリュームとしてはポジティブな単語の方が圧倒的に多い。また、「楽しい」「最高だ」「素晴らしい」など、評価の程度が高い単語も複数見られる。主な単語の原文を見てみよう。

●『良い』
 アニメ紅白いいね!
 なんかいい紅白だったなーって感じ

●『楽しい』
 今年の紅白例年より楽しい
 アニメ紅白楽しいww
 紅白の副音声楽しいw

●『ひどい』
 なんか色々ひどいな……
 紅白の茶番ひどい
 アニメ紅白酷い…。

●『残念』
 ワンフレーズで終わるのが残念(>_<)
 これじゃ若手は報われないな、正直今日の紅白のAKBは残念だわ

●『面白い(否)』
 アニメ、案外面白くない…。
 てか今年の紅白おもしろくない?ドメジャーとサブカルが同居してる

引用した最後の原文は「面白くない」ではなく、実は「面白い」という意味だったが、ここはテキストマイニングの難しいところ。ただ、指摘された点は興味深く、今後の紅白の1つの方向性かもしれない。他に、「ワンフレーズで終わるのが残念(>_<)」とあるが、好きな歌手の歌がしっかり聞けないところはファンとしては残念なところ。持ち時間が短縮されてもなおそれを上回る紅白ならではの価値があれば、ファンは離れないかもしれない。


●アニメ紅白や副音声など、副次的な要素も好評価

次に2つの単語に注目していこう。図3−1は「アニメ紅白」という単語の単語マップ、図3−2は「副音声」という単語の単語マップである。

図3−1 「アニメ紅白」単語マップ
「2015アニメ紅白」ワードマッピング.jpg


図3−2 「副音声」単語マップ
 「2015紅白副音声」ワードマッピング.png

今回の紅白では「アニメ紅白」に力を入れたようだが、ツイッターユーザーには好評価だったようだ。また、バナナマンを中心として様々なゲストを招いた「副音声」も楽しまれている様子がうかがえる。


●歌手への言及量ではμ'Sがトップ

 図1−1のワードクラウドでは出場歌手への言及も多かったが、改めて歌手に絞って上位30位までをグラフにしてみよう。

図4 歌手言及量グラフ
「2015紅白歌手」言及量グラフ.png

1位はμ'S(Μ'S)で、以下、AKB、西川貴教、大島優子、BUMP(BUMP OF CHIKIN)と続く。μ'Sとはメディアミックス作品群『ラブライブ!』に登場する架空の9人組女性スクールアイドルグループとのこと(ウィキペディアより。筆者は知りませんでした)。サブカルチャー出自といっていいだろうが、愛好者がネタ的に紅白を楽しんでいるようだ。

美輪さんも上位に入っており、幅広い年齢層からの関心が集まっている様子。トリを務めた近藤真彦と松田聖子が30位に入っていないのは意外だが、ツイッターのメインユーザーからするとあまりなじみがなかったのだろうか。


●まとめ

今回の紅白は視聴率は振るわなかったものの、ツイッターではおおむね好評価を得ていたようだ。ただ、本来の歌合戦を楽しむというより、アニメコーナーや副音声に注目されている様子もうかがえた。

誰もが知っている歌手がいるという前提が崩れている現在、こだわりを捨て、いろいろな形で楽しんでもらうことは大切だろう。あくまで王道を歩みつつ、時々振り切って先端を示してもらえると、筆者個人としては嬉しい。