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JMAマーケティングコラム 第46回「〜老後、おひとり様時代の暮らし方〜」

2016/05/24

タグ:澁野 一彦 シニアマーケティング おひとり様

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦


もたつく個人消費〜高齢者のマインドも盛り上がらず

総務省が発表した2015年の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は月平均287,373円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年に比べて2.3%減少した。2年連続マイナス成長で、アベノミクスの成長戦略も一般市民の消費高揚には、あまり寄与していないようだ。

2015年は1〜3月に耐久消費財などで消費増税前の駆け込み需要の反動減がみられた他、11月以降の暖冬の影響で冬物衣類の購買も鈍かった。 
消費支出の内訳をみると、教養娯楽が実質で4.0%減となった。パソコンなど前年にあったマイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」のサポート終了による買い替え需要からの反動減が響いたようだ。
円安により海外へのパック旅行も低調で、旅行需要の主力として期待される高齢者のマインドも盛り上がらなかった。

2人以上の世帯の消費支出を世帯主の年齢別にみると,40歳未満の世帯は1世帯当たり1か月平均268,180円,40〜49歳の世帯は319,584円,50〜59歳の世帯は339,967円,60〜69歳の世帯は289,289円,70歳以上の世帯は239,454円となった。
対前年増減率をみると、全ての年代で実質減少であるが、特に団塊世代を中心とした60歳代は、3.3%の減少と減少幅が大きい。高齢者の個人消費も節約基調になっている。


◆(単身)高齢者の消費支出で最も多い項目は?
では高齢者の消費の中身の特性に注目してみると・・・・。
日本の総世帯数5,043万世帯のうち、世帯主が60歳以上なのは2,566万世帯(50.9%)である。この高齢者世帯で特徴的なのは、単身世帯が多く、かつ単身高齢女性の割合が高いことである。日本では長寿化が進み、特に女性の平均寿命が86.8歳(2014年)まで伸びている。単身高齢者の3人に2人は女性である。

そこで、単身高齢者の消費について、70歳以上に絞ってその中身を見てみる(「全国消費実態調査2014」より)。70歳以上の単身世帯の男性の消費支出は月平均14.7万円、女性では15.4万円である。

単身世帯の支出.png

彼らの消費項目で最も多いのは、食料費である。
一般的に高齢者のエンゲル係数は高いと言われるが、特に単身の高齢者男性で高くなるのが特徴で、70歳以上単身男性のエンゲル係数は25.2%になる。1980年代の一般世帯全体のエンゲル係数が22%程度であったことを考えると、食料費のウエイトが増えていることが分かる。
高齢者にとって、「“充”の生活」(JMA「シニアライフ・センサス」参照)への身近な対応は、まず「食」であることがわかる。

   目立つ支出は医療費と健康づくりに交際費
逆に単身高齢者で少ないのは、住居費、被服・履物、交通・通信費である。高齢男性は、洋服にも靴にはほとんどお金を使わない。高齢男性が交通費・通信費を使っていないのは、会社をリタイヤして行動範囲や社交範囲が極端に狭くなるためである。また「国民生活時間調査2010年(NHK放送文化研究所)」では、70歳以上の男性は、平日に平均37分の散歩をしているというデータもあり、健康づくりを兼ねて歩くことが習慣化していることも影響しているようだ。

一方、男女とも高齢者は保健医療費の支出が多いのも特徴。医薬品、診療代への支出も若い人に比べて多くなるが、健康維持の為の健康食品やサプリメントの購入、またスポーツジムの会費等への支出も多くみられる。高齢者の生活の中で、自分の健康のために費やす時間とお金は大きくなる。
シニア層と言えば、旅行に出かけたり、買い物をしたり、余裕のある時間をアクティブに楽しむイメージがある。確かに、60歳代の前半では、活発にパック旅行や宿泊費にお金を使っている人が多いが、年齢が上がっていくにつれ教養娯楽への支出は手控えられていく。

少し意外なのは、自分自身の為の教養娯楽費は徐々に少なくなるのに対し、交際費は高止まりする点である。
高齢者は現役の頃と同程度の支出をしている人も多い。交際費とは、世帯の外の人に対する支出を指す。
高齢者が活発に支出する分野には、孫のための消費がある。また付き合いで、友人・知人と一緒に「食事やお茶」をするケースも高齢者で多いのかもしれない。特に交流範囲(ネットワーク)が広い単身高齢女性で交際費が多いのは特徴的である。


高齢者の独居は意外にも快適

「1人暮らしの高齢者は、家族と同居している高齢者よりも生活の満足度が高く、悩みが少ないのでは・・・」
診察の際のやりとりなどを通してこう感じていたという大阪府門真市の耳鼻咽喉科医院の辻川覚志医師は平成25年、同市医師会の相談電話や日々の診療を通じて聞き取り調査を開始。平成27年までに60歳以上の約1千人に対して、「生活への満足度」を訊いた。

その結果、独居世帯の生活満足度の平均は73・5点。同居の68・3点を約5点も上回り、悩みは少なかった。また子供の有無や男女による差はなかったという。家族と同居する人の満足度が低い理由について、同医師は「家族への対応に苦慮するため」と分析する。
家族とうまくいかなかったり、コミュニケーションが取れなかったりすれば、ストレスが溜り、生活の満足度は急激に下がる。一方独居なら、体調が悪くても自分のペースで動けて家族に配慮する必要もない。

ただし、満足度の高い1人暮らしの条件としては、

(1)自由で勝手気ままに 暮らせること

(2)信頼できる同世代の友人や親類が2〜3人いてたまに話ができること

(3)住み慣れた土地に住んでいること

と同医師は指摘する。

最近実施した弊社の「団地高齢者のホームビジット調査」でも、賃貸住宅に暮らす一人暮らしの75歳の高齢者の女性は「毎日友達と出歩いて、家にいるのは週2日くらい。3年前に夫が他界し、長男から一緒に住もうと誘われたが、友達が多く住むこの団地の生活を手離したくない」と微笑んで話してくれた。

昨年「おひとりさまの最期」を出版した社会学者、上野千鶴子先生の話。
「高齢者の独居は本人にとっても子供にとっても幸せで快適。周囲にさまざまな関わりがあれば、『おさみしいでしょう』というのは大きなお世話。独居イコール孤立といったステレオタイプはやめてほしい。孤独死になるのは孤立した生を送った人で、1人暮らしでも孤独でなければ“孤独死”にはならない。高齢になるとめったに突然死はしないし、今では要介護になればほとんどケアマネジャーがつくため、放っておかれることはない。不安に思う必要はありません」

今後、単身高齢者は着実に増加していく。介護や貧困のリスクに備え、社会保障制度の機能強化など、国や自治体がやるべきことは多々ある。ただ一方で、多様な生き方や家族の在り方に対応した成熟した社会とは、また血縁を超えてつながりが持てる一人暮らしの人が孤立しない社会(地域)とはどういうものかを、若年世代も含めて我々自身が当事者として真剣に考えていく必要がある。



■参考資料
・総務省「家計調査2015」
・総務省「全国消費実態調査2014」
・産経ニュースコラム「老後は1人暮らしが幸せ」
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