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シニアリサーチャーの“Re Work” 第3回 「人生90年。花の命は結構長い・・・♬」 

2017/09/19

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦


◆人生90年時代の設計
「花の命は結構長い・・・♬」。かつて生命保険会社のCMで流れていたあの曲である。この時は女性の美しさを応援するエールとして使用されていたが、今のシニアの応援歌としても当てはまる。

日本では平均寿命がますます伸びており、定年後のセカンドライフは、過去に比べればずっと長くなっている。
前回のメルマガでも取り上げたように、平成27年に60歳になった人たちの平均余命は 男性が23.6歳、女性では28.3歳まで伸び続けている。今の高齢者は老いても元気で、『花の命は、結構長い』のである。

その一方で、少子化が進んだこともあり、公的年金制度を維持するために年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられている。そのため定年を迎えても公的年金を支給される年齢(65歳)に至るまで働き続けなければ、必要な生活費を確保することができなくなってきている。


◆転機としての定年
下図はシニアの「生活の転機(変化)を自覚する年代」と「収入基盤(就労収入、年金)」の相関である。
※以下は弊社自主調査『シニアライフ・センサス(55歳以上男女1000人のライフスタイルに関する調査)』から。

男女で多少タイムラグがあるが、高齢者の生活のターニングポイント(変化)は、《55〜64歳》がピーク。
この年代は、就労収入から年金収入への移行期にあたり、収入ソースは就労収入と年金のWインカムになる。そしてこの期間は、老後年金生活への猶予(気持ちの準備)期間=『定年モラトリアム期』である。

□生活転機と収入基盤の年代変化 
生活転機と収入基盤の年代変化.gif

なお《55〜64歳》の年代で生活転機を実感する要因としては
◎(定年により)収入基盤が変化→「収入が減った」「定年退職した」「再雇用で給与が減った」・・・
・ライフステージの変化→「子供が結婚し独立した」「二人暮らしになった」・・・・
・家族の健康資源の衰退→「家族が病気になった」「親の介護が必要になった」・・・ 
などがあがり、「収入の減少」という経済的影響が最も大きいようだ。(弊社「高齢者インタビュー」より)


◆働き続けるシニア〜就労の延長

働き続けるシニア〜就労の延長.gif

年金支給が遅れているためか、高齢者(55歳以上)の就労率が、ここ数年少しずつであるが上昇傾向にあり、リタイヤ時期が延長、それに合せ雇用形態も多様化していることが認められる。

以下は、@男女別の就業率の年齢別変化と、A就業形態の年齢別変化である、
男性《55~59歳》では就業率が88%。男性《60~64歳》でも78%と、高い就業率をキープしている。
一方女性《55~59歳》の就業率は53%だが、《60~64歳》になると28%にまで落ち込む。
65歳以上になると就業率は急速に減少するが、《70~74歳》でも男女平均で28%の就業率で、4人に1人は
なんらかの形で働いていることになる。

@男女別の就業率の年齢別変化
男女別の就業率の年齢別変化.gif

A就業形態の年齢別変化
就業形態の年齢別変化.gif
※「シニアライフ・センサス2017」より

高齢者の就業形態を見ると、《60〜64歳》で正社員(率)が半減し、契約社員・嘱託社員が増加している。
60歳で一旦定年退職するものの、再雇用(契約・嘱託社員)されて給料は半額程度に下がるが、同じ職場で働き続けたり、地元でパート・アルバイトで再就職するというスタイルが一般化しているようだ。

毎年敬老の日に合せて発表される(9月17日)総務省の人口推計データでは、2016年仕事に就いていた65歳以上の高齢者は770万人で、1年前より38万人増えている。全就業者に占める65歳以上の就業者の割合は11.9%となり、高齢者が社会の中で一定の役割を果たしている実態を指摘している。


◆高齢者の就労(継続)意欲は高い
下図は、現在の就労者に就労継続希望年齢を聞いたもの。
現在就労している人の約7割人は年金年齢(65〜70歳)を超えても働きたい意向があり、「生涯現役」で
働きたいという人も2割強存在する。

□現在就労者の就労継続意向年齢
現在就労者の就労継続意向年齢.gif


◆人生90年。セカンドライフの就労
定年期を境に、生計の補填の為に就労するものの、就労形態は様々で、無理なく働ける働き方に移行する。
また生計の補填だけでなく、ボランティアや地域の社会貢献など“生きがい”としての就労が増えるのも高齢者の就労の特徴である。

下記は、東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)が提言した「セカンドライフの就労モデル」。
東京大学高齢社会総合研究機構「セカンドライフの就労モデル」.gif

高齢者がセカンドライフを設計する上で、「働く」ことがもたらす効果は大きい。
「働く」ことは会社を辞めて、一度失った人との交流・つながりを取り戻し、再び社会参加の場を提供してくれる。
また就労することで、何より生活にハリができ、規則正しい生活が維持できる。
自身の経験を活かし、地域の課題に取り組み、地域社会に貢献する役割も担う。
歳を取るに従って(体力やニーズに合せ)働き方を変え、働ける範囲で無理なく働く。自宅から遠く離れたオフィスではなく、自分の生活圏、地元で働く。

 “生きがい就労”の活躍の場は様々であるが、高齢者のセカンドライフの充実の為には欠かせないピースの
一つになっている。

今年度のJMA自主調査「シニアライフ・センサス2017」では、「定年後のセカンドライフについての意識や行動(準備)」について聞いている。やりがい・生きがいを求めて「生涯現役」を目指す人もいれば、「定年後は悠々自適」を理想とする人もいて、それぞれの生活価値を踏まえ「セカンドライフ」の意向は多様である。

《次号予告》
「セカンドライフ意識39項目」の因子分析結果とともに、シニアの「セカンドライフ・クラスター」を紹介します。
次号へつづく

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参考資料
・JMA自主企画「シニアライフ・センサス2011〜2017」
・総務省:統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)
・東京大学高齢者社会総合研