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シニアリサーチャーの“Re Work” 第5回 『「パラリンピック」と「ノーマライゼーション」〜多様性を受け入れる社会へ 』

2018/03/27

タグ:パラリンピック 多様性 澁野 一彦 ノーマライゼーション

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
取締役フェロー 澁野 一彦


先日、冬季パラリンピック平昌大会は閉会式を行い、障がい者アスリートによる10日間の熱戦が幕を閉じた。

パラリンピック アイススレッジスピードレース.png            
今回は日本選手団の活躍もあり、メディアで多く取り上げられたせいか、今まで以上に日本国民の関心が高まった大会になったように感じる。

社会の構成員として地域の中でともに生活を送り、誰にとっても「当たり前を当たり前に」を実現するための社会環境を整備していこうという考え方に「ノーマライゼーション」という言葉がある。

【東京都オリンピック・パラリンピック準備局のホームページより】
パラリンピックは、障害者がスポーツに親しむきっかけとなるだけでなく、「ノーマライゼーション」の考え方を社会に定着させ、障害者がその能力を生かし、自らの行動を決し、そして夢をい続けることができる社会づくりにつながるなど、社会に変革をもたらす力があります


様々な障がいがあるアスリートたちが、創意工夫を凝らして挑む今回の平昌パラリンピックも、誰もが個性や能力を発揮し活躍できる場であり、「ノーマライゼーション」の理解を促す良い機会であった。

ノーマライゼーション」の考えでは、障害があるかどうかや、その障害が軽度か重度かに関係なく、誰もが同じように人として当たり前の権利や生活環境を享受できる社会が普通の姿だと考えられている。

例えば、障がいがある、ないにかかわらず、すべての子どもには個性があるものと捉えて、子どもたちの個性に合わせながら教育すること。そのため障がい児も、障がいのない子どもと同じクラスで同じ授業を受ける。

「ノーマライゼーション」は、障がいのない人が障がいのある人を特別視するのではなく、障がいのある人でも普通の生活を送れる環境を整えて、共に協力しながら生活していくことを目指している。

パラリンピックが閉幕する時期と同じくして、エンターテイメントの世界でもこのノーマライゼーション」を身をもって実践する芸人が脚光をあびる出来事があった。


◆「迷ったら笑っといて」〜笑いの世界も“ノーマライゼーション”?

「迷ったら笑っといて!」。盲目のお笑い芸人、濱田祐太郎さんは、白杖(“はくじょう”と読む)を手に舞台に一人で立ち、自虐ネタをしゃべりまくる。ピン芸人日本一を決める「R-1ぐらんぷり」で、圧巻のしゃべりを披露して、“ひとり芸日本一”の称号を勝ち取った。

今回で16回目となるこの大会で、決勝まで勝ち進んだ障がい者の芸人は初めてだということである。(R-1ぐらんぷり2018事務局HP)そんな濱田さんが得意なのが「視覚障がい者あるある」と「盲学校あるある」ネタ、今回のR−1でも披露した。

「盲学校の生徒って全員目悪いんです。教室に黒板あったんです。いや、見えへんて!」
「修学旅行で北海道に行くってなって、全員目悪いのに、その生徒に向かって先生が『札幌ドームにプロ野球を見に行きます!』って。えー!!」

今まで障がいをネタにした笑いはタブー視されていた。だが、濱田さんは「タブー」と感じたことはないと話す。

「受け取る人によってとらえ方は違うとは思うのですが、僕は別にタブーと思ったことはないですね。両方の意見があって当然なので」。(同番組ファイナリストインタビューより)

「R-1ぐらんぷり」後の別の番組で、吉本興業の大先輩である松本人志氏は、濱田さんの芸は「全然気の毒な感じがしない」と語っている。それだけ、話芸の技術が高いということである。
濱田さんにとって、「ブス」や「ハゲ」「デブ」を自虐ネタにしているのと何ら変わりないということかもしれない。

現実の社会は、まだまだ健常者中心に作られており、買い物や電車に乗ったりする時など、ハンディを感じる時は多いと思うが、彼にとってお笑いの舞台は、逆に障がいのハンディを感じない場所であるようだ。

一方で濱田さんは、
「僕自身は弄って(いじって)頂いて全然いいんですけど、障がい者全員そうじゃないってことだけは覚えおいて欲しい」
とも言っている。多様性を受け入れるということは、いろいろな感情を持つ人がいるということ、配慮が必要である。


◆“当たり前”を改めて見直してみる

国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長は平昌パラリンピック閉会式の日、記者会見で「韓国の人々がパラリンピックに触発され、多様さをより受け入れる社会になることを願う」と語っている。

欧米に比べ、アジア諸国の障がい者を受け入れる考え方はまだ遅れている。
日本でもバリアフリーの街づくりは少しづつ推進され、車いすで外出する人もだいぶ増えて来ている。しかし、人々(健常者)の障がい者に対する接し方、考え方が十分成熟しているとは言い難いのではないだろか。

障がい当事者が、あらゆるジャンルでチャンレンジできる社会こそが 「ノーマライゼ−ション社会」の前提。濱田さんの「R-Iぐらんぷり」参戦は今回で7度目の挑戦だったという。

健常者が普段気づかない世界を、濱田さんの卓越した話芸で彼らにとっての当たり前を気づかされ、いつの間にか見る者の意識、見方を変えてくれる。

障がいの人たちの当たり前を知ること、
それは自分たちの当たり前を改めて見つめ直すことにも繋がる。

今後の濱田さんの活躍を期待している。



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資料



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