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テキストマイニングの小部屋 第19回「アカデミー作品賞『シェイプ・オブ・ウォーター』」

2018/03/27

タグ:シェイプ・オブ・ウォーター 梶山賢一 テキストマイニング

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー
企画部 アシスタント・ディレクター 梶山賢一

3月5日(日本時間)、第90回アカデミー賞の発表があった。注目の作品賞はギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』で、作品賞のほかにも、監督賞、作曲賞、美術賞を受賞した。

また、主演のサリー・ホーキンスが主演女優賞にノミネートされたほか、リチャード・ジェンキンスとオクタビア・スペンサーもそれぞれ助演男優賞と助演女優賞にノミネートされるなど、専門家の評価は高かったようだ。日本では、3月1日にR15+指定で一般公開されている。筆者自身はまだ観ていないが、すでにご覧になった方も多いと思う。
今回は、『シェイプ・オブ・ウォーター』のつぶやきを分析した。


<分析対象>
■検索対象:「シェイプ・オブ・ウォーター 観る(見る)」
      という単語を含んだツイッター。
      ただし、「RT」などは除外した
■対象期間:2018/2/26〜2018/3/11
■対象件数:20,000件
■分析ソフト:株式会社プラスアルファコンサルティング『見える化エンジン』

<インデックス>
 1.公開日とアカデミー賞発表日に投稿件数が急騰
 2.「良い」「好き」などポジティブな評価が上位に。ほかの映画のツイートも多い
 3.ギレルモ監督の過去の作品への言及も見られる
 4.比較的長文で練られた文章の投稿が目立つ


●公開日とアカデミー賞発表日に投稿件数が急騰

日本での一般公開が3月1日、アカデミー賞の発表が日本時間3月5日だったので、それらを含む2週間を分析対象とした。図1は、2/26~3/11の投稿数の時系列推移である。

図1 投稿数の時系列推移(2/26~3/11
Image 1.png

やはり、公開日には前日の4倍近くのツイート数となっている。その後はほぼ横ばいだが、アカデミー賞発表日の3月5日に急上昇した。今回の分析ではRTは除いているので、すでに映画を観た人か「観たい」と意思表示している人がほとんどとなるが(様々な文章があるので完全ではない)、アカデミー賞受賞の影響が大きいようだ。


●「良い」「好き」などポジティブな評価が上位に。ほかの映画のツイートも多い

次に、投稿の全体の様子を見るため、単語と係り受けの上位ランキングを見てみる。係り受けでは、『シェイプ・オブ・ウォーター』に係るものだけに絞っている。

図2−1 単語ランキング(上位20位)
Image 2.png
※「見る」「見たい」は「観る」「観たい」に同義語処理している

5位に「良い」、9位に「好きだ」とあり、ポジティブな評価がされているようだ。
また、「ブラックパンサー」、「グレイテスト・ショーマン」、「15時17分、パリ行き」、「スリー・ビルボード」と、同時期に公開された映画タイトルも入っていて、「シェイプ・オブ・ウォーター」以外の映画にも関心を持ったり、実際に観ている人が多いことがわかる。おそらく、月に何本も見るような映画ファンが多いのだろう。映画好きが見たい作品であるようだ。
なお、20位の「パンズ・ラビリンス」はギレルモ・デル・トロ監督の2006年の監督作品で、今作と過去の作品と比較した投稿もあるようだ。


図2−2 『シェイプ・オブ・ウォーター』の係り受けランキング
Image 3.png

図2−2は「シェイプ・オブ・ウォーター」に係る単語の上位ランキングである。
「シェイプ・オブ・ウォーター−観たい」と、期待が高まっている様子がわかる。また、「良い」「面白い」「好きだ」というポジティブな評価のほか、「受賞する」「取る」など、アカデミー賞の話題も上位にランクインした。



●ギレルモ監督の過去の作品への言及も見られる

前節で他の映画についても投稿されていたが、ほかにどんな映画が投稿されているのか気になったので、映画タイトルだけ集めてみた。

図3−1 映画タイトルのワードクラウド
Image 4.png

こうしてみると、さまざまな映画タイトルについて投稿されているのがわかる。
図3−1の「シェイプ・オブ・ウォーター」のすぐ下にある「パンズ・ラビリンス」「パシフィック・リム」「ヘルボーイ」「クリムゾンピーク」はギレルモ監督の過去の作品。今回の投稿では、あらためて「パンズ・ラビリンス」のすばらしさに言及しているものもいくつかあった。また、「パディントン」はサリー・ホーキンス出演映画である。
「大アマゾンの半魚人」は1954年製作のホラー映画で、子供のころにギレルモ監督が見て「シェイプ・オブ・ウォーター」の着想のもととなったらしい。みなさんよく知っていますね…。

次に、投稿された単語の単純な件数ではなく、意味に分類した場合の投稿の様子を確認してみる。ここでは、
「ポジティブ単語」
「ネガティブ単語」
「この映画を評するときのキーワード(と思われるもの)」
「映画関係者」
「役名」
を<重要な単語>と定義して、<重要な単語>の上位のものを表示した。

図3−2 <重要な単語>のワードクラウド
Image 5.png

・赤字…「ポジティブ単語」
・青字…「ネガティブ単語」
・紫字…「この映画を評するときのキーワード(と思われるもの)」
・緑字…「映画関係者」
・茶色字…「役名」

これを見ると、「良い」「美しい」「素晴らしい」などのポジティブ単語が多い。
また、筆者が勝手に判断した「キーワード」としては、「映像」「音楽」「恋愛」「ファンタジー」のほか、「マイノリティ」「異種間」などが挙がっている。
また、ギレルモ監督だけでなく、サリー・ホーキンスへの言及も多い。また、「イライザ」はサリー・ホーキンスの役名である。主演女優賞は逃したが、その演技は高く評価されているようだ。


●比較的長文で練られた文章の投稿が目立つ

最後に、重要な単語を含んだ投稿の原文をご紹介しよう。さまざまな思いが寄せられており、つい語りたくなる映画なのかもしれない。

「映像」
eizo.png

○「音楽」
ongaku.png

○「美しい」
utukushi.png

○「素晴らしい」
subarashi.png

○「マイノリティ」
minority.png

*次のツイートは連投の引用で長くなるが、マイノリティであること(あるいは「抑圧」されているもの)についての考察がよく語られていると思う。

tayousei.png

○「愛」
ai.png
ai2.png
以下は、重要な単語が含まれていないものもあるが、興味深い投稿も多いので、「その他」として抜粋し、まとめた。

○その他―この愛もステレオタイプなのか?(フェミニズムからの視点)
feminism.png


○その他−現代アメリカの描像の面も
gendaiamerica.png

○その他−(当たり前だが)苦手な人もいる
nigate.png

●まとめ

最後の原文のご紹介はやや長かったかもしれないが、文章を読まないと伝わらない気がして、あえて多めに引用した。

原文を読んであらためて感じたのは、この映画は、「正面に座って語り合う」というより、「(伝わらないかもしれないと思いつつ)横に座って語る−聞く」あるいは「一人で語る」というものなのかな、ということだ。ツイッターは、語り手の一方的な発散であるという批判もされるが、一般の人がこの種の映画を語るにはふさわしいツールかもしれない。

この原稿を書くためいろいろツイートや記事を見たが、そのせいでまだ観ていないのにもう観た気になってしまった…。でもせっかくなので、終わらないうちに劇場で観ようと思う。


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